にぎやかなクラスメイトたち
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
彼女は、早速、生徒たちに囲まれていて、質疑応答をしている。
たとえば、生まれはどこなのか、年齢は何歳なのか。そして、ミーハーな彼らにされたのは、彼氏はいるのか、恋人にならないか、という質問だ。
最後の質問は、勇気ある男子生徒からだったが、彼は、ユキにじっと見つめられ、それから、彼女は、スズを見た。
「私が護るのは、スズだから」
ユキがそう言うと、クラスメイトたちは、どっと沸いた。
「ねえねえ? スズさんは? どこの出身なの?」
スズもまた、女子生徒たちに囲まれていた。
「あー……えっと……」
彼女は唇を引き締めて、顔を斜め下にそらす。うーん……私、みんなに一気に来られるの苦手なんだよな、悪いけど。スズは人差し指で頬をかく。すると、丸眼鏡の女子生徒が彼女に近づいた。
「まあまあ、みんな落ち着こうよ。スズさ——」
彼女は、こほん、とせき払いをする。
「気持ちはわかるけど、橘さんも、たくさん質問されたらちょっと困っちゃうよね?」
「あー、ごめん。シノ! クレープおごるから」
「いいけど、買い食いダメじゃなかった? ええっと……」
彼女は緑色の手帳に目を通す。
「あ、大丈夫みたい。でも、クレープをおごるのは金銭関係が発生するから、ほかの子たちと食べてきて。私はいいから」
シノ、とクラスメイトから呼ばれた彼女は、スズにウインクする。
「スズさん誘ってきなよ。ね? スズさん。私は村石シノ。ねえ、さっきの質問なんだけど、出身聞いてもいい? 私はここ出身なんだ」
「北海道の釧路ってとこなんだけど……」
すかさず、ほかの女子生徒が会話をかっさらう。
「あー! そこって、私たちの都市があった場所だよね?」
「ねえ! あったあった! ねえ、どうして、諏訪市に来たの?」
スズは色めきたつ女子生徒たちに、少し苦手を感じていたが、彼女自身、無視は嫌なので、クラスメイトたちに答えようとしたが、再び、シノが割って入る。
「あ、ごめん。聞いちゃいけなかった? シノってめっちゃいい子だからさ。仲よくしてやってよ。それに、私たち、みんなあなたたち二人のこと聞きたいんだから」
「うん、いいよ。引っ越ししたんだよ。家の事情なんだ」
「ふうん。あ、そうそう。ねえ、昨日のニュース見た? あの地上の第5管区の?」
「ねえ。見た見た! あれさー、ホントにただの事故なのかなー?」
スズは、話に盛り上がる彼女たちをよそに、窓際のユキに視線をやった。
シノは丸眼鏡を押し上げて、そっと微笑む。まるで、二人を見守るように。
その後も、ユキは黙って首肯するか、首を横に振るか、または、言葉で肯定するか、もしくは否定をするという行為を続けた。
シノはスズに耳打ちする。
「ごめんね、橘さん。うちのクラス騒がしいでしょ?」
シノさんの距離ちか……、これが都会の子か、とスズはどぎまぎしながら答えた。
「……ううん。大丈夫。それに、できれば名前で呼んでくれると嬉しいな、なんて」
「あ、ごめんなさい。慣れ慣れしくて」
シノがもろ手を振ると、スズは首を横に振った。
「ううん。友だち少ないから嬉しいよ。ありがとう、シノ……さん」
「〝シノ〟でいいって。スズさん」
スズは愛想笑いをして、頬を人差し指の腹でかく。
シノは転校生に向かって、丸眼鏡をカシャリッと押し上げた。
「ありがとう、スズさん。これからよろしくね」
だが、アヤが、クラス全体に呼びかけたことより、それは中断させられた。
「はい。では早速、授業を始めますよ。教科書の最初のページを開いてください」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




