林サクラ
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズを含めた三人は、その女性職員に着いていく。ハルトはアオの言うとおり、ケージには事情があって行けないらしい。案内を終えた女性職員は、スズとアオに一礼すると、仕事に戻っていった。
すると、濃紺色の人型のものは、ケージに固定されていた。〝それ〟は、薄赤い液体ガスで上半身が噴射されているらしい。
スズはそれを見上げながら、ふと問いかける。
「あれって、ロボット?」
スズの問いかけに、アオはうなずく。
「広く言えばそうだね」
スズは驚いていた。しかし、彼女はケージで作業する人影に気づくと、指さす。
「ねえ、アオくん。あの人は?」
どうやら、その小柄な人影は、安全ヘルメットを頭に被る、薄い桃色の人間だった。
「あの人は林サクラ主任。このロボット——ウーゼの開発や研究をする部署の主任なんだ。主任。紹介したい方がいるから、降りてきてくれない? きっと、気に入るよ?」
スズたちの耳に聞こえてきたのは、女性の声だ。
「今行く!」
明るい声の彼女は、薄い桃色の姿のまま、鉄で造られた階段を金属音を鳴らして、カンコンと足音をたてて降りてくる。
女性はあごに通していた、安全ヘルメットのベルトを外し、安全ヘルメットを後頭部にずらす。スズが薄桃色だと思っていたものは、桜色のジャンパーで、彼女は紺色の、上下着脱可能なつなぎ服の上に着ていた。
スズはちょっと驚いた。彼女が茶髪だったこともあるが、彼女の顔を見たことがある気がしたのだ。
サクラはとびっきりの笑顔で、特別仕様の機械メンテナンス手袋を外すと、つなぎ服のポケットにそれを突っ込む。その特別仕様の手袋は、桃色と黒色がバランスよく混じっていた。
「わあ、スズちゃんだ! 初めましてじゃないね、お久しぶりです。橘さん。林サクラです」
「え、ああ、お久しぶりです、林さん。なんとなく覚えています」
「ホント? 私、橘さんと昔会ったことあるんだよ。赤ちゃんのときのスズちゃんもかわいかったけど、今も美人さんだね」
スズははにかむ。
「あ、ありがとうございます」
そして、彼女は、目の前の濃紺色のロボットを見て、嬉しそうにする。
「すごい。これが、さっき、私を助けてくれたロボット……」
スズの脳裏に、警告する叫び声が、何かが獣のように凄まじく本能に従っている様の雄叫びが思い出された。
彼女は甲高い耳鳴りに、思わず耳を塞ぐ。
サクラは、スズの異変に気がついたのか心配をする。
「スズちゃん、大丈夫?」
その心配をするサクラの声は、今のスズには少し遠くに聞こえた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




