スズと室長と、謎の少年
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
腹部には、まだ巨大な穴が空いているようだったが、巨大な包帯で応急処置をされ、今から、灰色の板状のものが腹部に付けられるようだ。
あ、あれも、さっきのと同じなのかな? スズはその人型が遠くて見えづらかったので、少し目をこらした。灰色と、黒色が混ざってる? ホントにここって組織なんだ……。
スズの目の前のハルトは、受付の女性に話しかける。
「林主任はいるのか?」
彼女は気がつくと、パーソナルコンピュータの記録をさらい、出入りの確認をする。
「はい。林主任ですか? 五時間前から、2号機と5号機の修復作業に入っていますが——」
彼女は、ハルトからパーソナルコンピュータにまた目線を戻しかけた。だが、ハルトの後ろにいるスズに気づくと、目の前のワーキングチェアから彼女が立ち上がり、微笑んでお辞儀をした。
「お話はうかがっています。これから、よろしくお願いしますね」
スズは少し緊張していた。ああ、ここにも私の情報が入っているのか、と彼女は直観した。
「あ、はい。よろしくお願いします」
彼女はハルトに話しかける。
「ところで、ケージは案内できますが、林主任はまだ取り込み中なので、もう少し待っていただかないと……それで、室長は何をなさろうとしていたんですか?」
スズはサクラの発言に、少しだけ首をかしげた。ん? 室長?
ハルトは特段それを気にもしない風で、女性職員に応えている。
「5号機の修復作業中のところをすまないが、見せてくれないか」
受付担当の女性職員はケージを振り返り、まだ作業をしている職員たちを見る。かすかに、物資や工具を求める作業員の声も聞こえる。
「ですが、その林主任は、5号機の頭部、腹部、右腕の修復作業に追われています」
ハルトは、少し唇を引き締める。
「無理を言ってるのはわかってる」
スズをちらりと見て、また彼女に顔を戻す。
「見せてほしいんだ」
彼女は少し考えていたようだったが、何かを決めたようだった。
「わかりました。着いてきてください。では、こちらへ」
「あー、待って待って。ダメじゃない? 特に室長は、ウーゼに近づいちゃダメ——そうでしょ?」
微笑むアオは、黄色いパーカーを羽織っている。
「それに、僕も興味あるね。その5号機」
そして、また彼は笑った。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




