記憶の中の声
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
「俺らと一緒に人類を救ってほしい。人類の未来を……」
だがハルトは、自嘲的に言い直した。
「って、こんなの、すごく勝手だけどな……」
ハルトは、スズに軽く手を振る。
「じゃあ、ゆっくり休めよ」
ハルトが病室の扉から出ていくと、彼女は膝を抱える。
「無理だよ。そんなの……」
スズは、紙袋に入っていた制服のスカートのチャックを閉めながら、先ほどまで起こっていたことを思い出していた。大体、そんなことできないよ……。
セーラー服の上着を着用したスズは、空の紙袋を机に置いた。それを少し、ぼんやりと眺める。ノヴァ、か……。あの子……確か、違う病室にいるって……。
スズが病室の扉を開け、廊下に出る。
すると、キャスター付きの移動ベッドに、白髪の少女が乗せられて運ばれていく。
「あっ……」
あの子、誰——?
スズはユキを一瞬だけ見ると、彼女の長いまつげに包まれた赤い瞳が——だが、どこか遠くを見ているような瞳が、スズを見つめ返した。
スズの脳裏に、何か嫌な記憶のノイズが走ったような気がした。
扉のすぐ近くにいたハルトは、読んでいた文庫本を閉じて彼女に尋ねる。
「スズ? ああ、制服似合ってるな」
「あ……ありがとうございます」
だが、彼女のその顔はあまり嬉しそうではなかった。
「何かあったか?」
「いえ、なんでもないです。あの、聞いてもいいですか? さっきの、白い髪の女の子のこと……」
白い髪の女の子、と言ったとき、スズは目を床に落とした。唇を少し結んで噛みしめ、顔をうつむかせる。
スズの脳裏には、静かだが異様な気配がある声が、回帰される。
「ねえ、あなた……どうかしたの?」
窓際のスズとハルトを、夕暮れの陽が柔らかに照らしている。
スズには一瞬だけ、何も聞こえないように思えたが、また、せみの声がうるさく、耳に聞こえてきた。
「いえ。やっぱり、なんでもないです」
否定をしたが、スズは、自分の心臓が嫌に大きな音を鳴らすのを感じた。
ハルトは、スズに気づかれないように左手の拳を握って離した。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




