スズとカエデ
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズは、ベッドの上で目を覚ます。
「——ここは」
部屋のカーテンは開けられた窓によって、なびいていた。
すぐに、スズの記憶は戻ってきた。
あの黒髪の女の子——カエデが、肩で必死に呼吸をしながら苦しんでいる姿。
轟音とともに、自分の頭がひどく痛くなったこと。
——そして、あのとき以来、初めて死を感じたこと。
スズは勢いよく、ベッドから起き上がった。
どこか遠くに聞こえる午後のニュースが、彼女の耳に徐々に聞こえ始める。
『先ほど、日本政府と国連軍との合同会議の結果、第5管区の事件は、爆発事故だと、正式に発表され——』
電光がついていない電灯を、スズは仰向けでぼんやりと見る。
「なんでカエデさんは、あの白髪の子に似てたんだろ……」
スズは、嫌な記憶の一部をふっと思い出すと、背筋がぞわりとした。
膝を抱え、まぶたをぎゅっと強く閉じ、自分の肩を抱きしめる。
病室の扉からノックの音が聞こえると、青年の姿と、一瞬だけ長い黒髪を持つ少女の後ろ姿が見えた。
「あっ……」
スズはベッドから降りると、彼女に駆け寄ろうとしたが、足がもつれた。少女はそれに気がつくと、スズに体を向け、手を差し伸べる。
「大丈夫?」
彼女はあひる座りをしながら、再び、黒髪の少女に上目遣いをした。
「うん……ありがとう。えっと……」
「久遠カエデよ。よろしく、橘さん」
「やっぱり、久遠さんだ。さっきはありがとう」
「いえ。カエデでいいわ。あなた、私のこと、カエデさんって呼んでたじゃない」
「いや。そんな……」
スズは胸の前で、もろ手を振った。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




