ユキとアオ
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
ヘリコプターから、少年が降りてきた。それは指令室・室長のハルトではなく、1号機(改2)パイロットのアオだった。
「なんで、あの力なんか使っちゃったのさ?」
彼が肩をすくめると、ユキはひと言答えた。
「スズとカエデが危険だから」
アオは、赤色が混じった黒い瞳を見開くが、そのあとは笑った。
「そうだね。君はそういう性格だったよ。帰ろうか。みんなが待ってる」
アオは、ユキに手を差し伸べる。ユキにはまるで、ダンスを申し込むように見えた。
「……私と踊ったことある?」
アオは、ん? と首をかしげたが、彼女の言葉の意味に気がつくと、今度は、ふっと笑う。
「今度踊ろうか? 楽しいよ」
彼女の素足が、冷たいヘリコプターのふちに降り立った。
アオはそれに密かに眉をひそめるが、ユキはそれに気づかずに淡々と答える。
「誘ってくれてありがとう。今度ね」
「はだしって……冷たくないかい?」
彼女はストンと座席に座ると、シートベルトを締めた。
「ちょっとだけだから、平気」
「けがは? ガラスとか踏んでない?」
ユキは両足をそろえてから膝頭を右に傾けて、ちらっとはだしを見る。特に、けがも何もしていないように見えた。
「ううん、平気」
「そう……よかった。ユキさんにけががなくて」
アオは安堵していたが、へなへなと力なく、うなだれた。
「僕、これから、室長たちに叱られなきゃならないの、すごく憂鬱なんだよな……。アカネには、支部から追い出されちゃうし」
ユキは眉をひそめ、唇を噛む。アカネ——私を嫌っているヒト。私がカエデに……。しかし彼女は、心中の憂鬱な思いを消した。
「大丈夫」
「え?」
アオは抱えていた頭を離すと、妙に輝いたような瞳で、白いワンピース姿の彼女を見る。今の彼女の言葉で、もしかしたら自分は怒られないかも、という期待感も混じっていたからだろうか。
ユキはサムズアップをしていた。
「大丈夫。私も一緒」
ユキは真面目な顔だが、その顔と手の動きが、アオの中でぴったり一致しないらしい。だから、彼は、顔をほころばせた。
「なんだ。てっきり怒られないと思ったのに……ユキさんも一緒か」
「うん。無断で〝クロス〟を抜け出したから、私も一緒に怒られる」
アオはまた力が抜けたようにへなへなとなったが、そのまま笑った。いつものにこやかな笑顔とは違う、少年らしい笑った顔だった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




