世界を滅ぼした危険な力
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
ユキは5号機にいとも簡単に上る。
彼女が思考をすると、ガゴンッ、とプログが、後方へと稼働されて勝手に射出をされる。
「また会えた……スズ」
そして、彼女は、コックピットをよく観察した。
スズを見ると、彼女は体をコックピットに深くもたれこんで、まぶたを閉じていた。その中には、黒髪の少女が意識を失い、ぐったりと体をもたれていた。
「カエデ。あなたも、スズとあの子を護ってくれたのね」
ユキは、ぐったりとしたスズを背負い、カエデの腕を自分の肩に回した。彼女は少女たちを背負い、または肩を組んだまま、少し急ぎ足になる。
二人分の人間の重さなので、彼女は、急ぎ足といっても、途中で下手をすれば、よろめいて転びそうになるくらいだった。
バシュウウッ、と開かれたプログのハッチから、なびいている自身の白髪を気にも止めずに、ユキはプログの外へと立ち上がった。
ユキが頭上の音に気づいて上空を見上げると、支部の護送ヘリコプターがそこに来ていた。
だが、彼女は思考で、誰かに呼ばれた気がした。
その誰かの声は、そよ風のようにふわっと優しい穏やかな声だった。
『ユキ』
ユキは、ふっと首だけで後ろを見るが、その視線の先には誰もいなかった。
「……」
今の声、ナギサなの?
「ああ……」
ユキは5号機を見る。だが、5号機は腹部に大きな穴が開き、頭部にも損傷を負っていた。ユキは、呆れと冷静な怒気を込めて、ボソリと口の中でつぶやく。
「エンジェル……5号機に破壊再生を起こさせた。私なら——私は、そんなことさせない」
だが、そのあとは、寂しげな表情をする。
その声には、いつもの冷静さに加えて、独りにされたような寂しさもあった。
「でも……一番愚かなのは、この〝原罪の力〟を使った私……」
だが、ユキは、いつもより穏やかに語りかけるような口調で、どこかを見つめた。
「この力は、世界を滅ぼした危険な力……」
ユキは唇を噛む。
「カエデの力もそう」
ユキは、ため息をつきそうな瞳で、疲れ果てたカエデを見た。彼女は私のせいで、エンジェルと融合してしまった。体はカエデなのに、その力は、カエデじゃない。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




