沈黙
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
一方、指令室のメインディスプレイでは、真白ユキを捕捉していた。
ハルトが、そのディスプレイのある一点に指をさす。
「いた。あそこだ。裏口にいるぞ」
白髪を持つ彼女がいる場所は、支部の裏口だ。彼女は、憂うような表情で、支部の壁に手をつけている。
彼女は、我が子を見る母のように、5号機の中にいる二人に何か声をかけたようだが、その顔は無表情のままだった。
ユキを、メインディスプレイと、オペレーターのパーソナルコンピュータに映し出した途端、彼女が何かを話した。
ハルトは、そのオペレーターに向かって問いかける。
「今、0号機パイロットが何か言ったか?」
しかし、若い女性オペレーターは、声で否定した。
『いえ。わかりません……』
そして、ユキは、罪人を無言で見下ろすように、厳しい目つきをエンジェルに流す。
次に発せられたユキの声は、平常の優しい声ではなく、冷静な声だった。
『消えなさい。愚かな神の子よ。あなたに原罪を』
指令室にいたハルトは、すぐにユキの能力だと察すると、エンジェルと5号機の間を、十メートルの金属の壁で隔てた。
空が一瞬、キラッと瞬いて光る。
エンジェルは振り返ったが、プロテクトを自分の体にまとうにも遅かった。
ヒュウッ、と、巨大な螺旋状の黒紫色の槍が、エンジェルに向かって降ってきた。5号機が咆哮したあのとき、背後の空の、巨大な灰色の扉から出現したのだ。
ユキの〝原罪の力〟の黒紫色の槍によって、エンジェルはコアが破壊されると、白い十字架となって沈黙をした。
突風と爆発音が、諏訪市の街中を襲う。
指令室のメインディスプレイが砂嵐で見えなくなり、ハルトの発言は、他のオペレーターよってやむなく中断をさせられた。
薄暗い5号機のコックピットでも、オペレーターの報告が聞こえていた。
若い女性オペレーターが報告する。
『通信、途絶えました。約六十秒後には回復』
『麻酔薬の投与は続行不可能。投与を中断します』
続けて、ウーゼ開発研究主任の声が、ディスプレイから聞こえる。
『5号機の回収を開始』
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




