嫌悪
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
「ねえ? 何かあった?」
スズが、彼女たちにプログから呼びかけると、アオは誰かを探すように、ケージに視線を見回していた。
「何かあった?」
「いや…………ないよ」
いつの間にか、カオルはいなくなっていた。スズがプログから呼びかける前に霧となって消えたのだ。
カエデは、はあ、と息を吐き、ケージの手すり付近に座り込んだ。カオルとの接続は彼女を疲弊させるらしい。
その瞬間、ドゴンッ、と大きな縦揺れが起こった。5号機のディスプレイに、エンジェルの姿が映る。彼女の周りのアスファルト舗装道路が放射線状にひび割れていた。
スズは、プログから身を出して叫ぶ。
「ねえ! 大変だよ!」
そのとき、妙齢の女性の声が、ディスプレイを通して聞こえる。スズにとってその女性の声は、彼女が従わなければならない、命令のような声に聞こえた。
『5号機パイロットはそのまま待機、久遠パイロットは、今すぐ5号機に搭乗して』
カエデは唾を飲んでから、その声に答える。
「了解」
外界から金属音が聞こえると、アオがプログのハッチのへりに手をかけて、中に叫ぶ。
「アカネ! 彼女は……」
『一色パイロットは待機。あなたは、そのあとの護送ヘリに搭乗して』
「は……? 何か言ってるのさ?」
『そんなに彼女が心配なら、彼女をあとででも迎えにでも行けば?』
そのあとの5号機のディスプレイは、すぐに不通音になった。
スズは、女性の突き放したような言い方に、唖然としているだけだった。
「ええ……もしかして、苦手なのかな? アオくんのこと」
「苦手どころじゃないよ、スズ。彼女はユキさんのことを嫌いなのさ。だから、同じ穴のむじなの僕ことも嫌い——面倒くさいね。人間は」
そこに、カエデが、慣れた様子でプログに潜り込んできた。その代わりというように、アオは手を振って去っていく。
「じゃあね、スズ」
「あっ、待って……」
スズがカエデを横目にアオの姿を追うと、アオは慣れた様子で5号機から降りていくところだった。そして、アオはまた手を振る。スズも彼に手を振り返したが、その顔は曇っていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




