似つかわしくない言葉
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
「ええ?」
スズは一瞬だけ、鷹のような彼女の瞳に睨まれると、もろ手を慌てて口元に当てた。
「あ、ごめん……頭痛するんだよね? 大声出してごめん、カエデさん」
そして、スズは、罰が悪いように唇を引き締めると、カエデに黙って着いていった。
白衣姿の女性は、携帯電話を白衣から取り出すと片耳に当てた。だが、彼女は、空いている片手を伸ばす。
「あっ、待ってよ。カエデさん、スズさん!」
「ごめんなさい、サクラ」
「いや、ごめんとかじゃなくて! カエデさん?」
二人で走り始めたとき、カエデは、スズをちらりと見た。
「走れる? スズ?」
スズは切れ切れの息の間に、うなずいた。そして、スズが、カエデに呼ばれたサクラを首を回して見ると、彼女はどこかに電話をしているようだった。あの青年に連絡をとるつもりだろうか。
カエデは先頭になり、スズを誘導しているが、その脚力がスズよりも早いのだ。
「うん。私は大丈夫。カエデさんは?」
「まだふらつくけど、平気よ」
すでに前を向いた彼女の瞳は、濃紺色のウーゼに定められていた。
「ねえ、さっきのサクラさんと知り合いなの? 名前呼んでたよね?」
スズの予想に反して、カエデは二重の瞳を大きく見開かせた。
「え? 本当?」
「うん。本当。サクラ、って呼んでた」
「そうね。私、彼女にお世話になってるわ。あなたもこれからは、たくさん彼女とお話しする機会があるかもしれないわね」
スズは、唾を飲んだ。
自分に、これから、という言葉が、似つかわしくなかったからだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




