命令違反
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
白衣を着た女性は、スズを不思議そうに見る。
「そちらの方は?」
スズは鉄骨で組まれたケージに背を預け、両足を左側に寄せていた。そして、彼女は白衣の女性に上目遣いをする。
「え、あの……」
スズはせき込んだ。
サクラは、彼女の肩にそっと触れる。
「大丈夫?」
スズが肩を震わせると、サクラは素早く、その手を離した。
サクラは、ケージに片膝をついたまま、医療班の職員に答える。
「さっきのCPO循環器が止まった影響ですね。バイタルは安定」
そして再び、彼女は、スズに問いかける。
「せき以外に、どこか痛いところはありませんか?」
スズは小さく口を開け、あ、とも、えっと、とも言えない声を上げる。そして彼女は、右側に視線を向ける。
「背中を強く打ったんですけど、動けるので、多分大丈夫です」
目線が合わないスズに対し、白衣の女性は優しく微笑んだ。まるで、少女の不安をほどこうとするように。
「わかりました、橘さん。この薬は痛みを抑えるものなので、飲んでも安全ですよ」
スズは唾を小さく飲み込んだ。なぜ、この優しそうな女性が、アオくんやカエデさん、ディスプレイ越しに応えた青年と同じように、自分の名を知っているのかとっさにわからなかったからだ。
「あ、はい……。ありがとうございます」
スズは鉄骨で組まれたケージに座り込み、彼女に会釈すると、手渡された錠剤を水で飲み込んだ。
彼女は、黒髪をかき上げたカエデを、今度は上目遣いで見た。彼女は体育座りをし、落ち込んでいる様子だった。
スズは立ち上がると、彼女のベッドに近づいた。そして、遠慮がちに、彼女に問いかける。
「あの……カエデさん」
カエデはその体勢のまま深呼吸をすると、凛々しい瞳でスズを一瞥した。
「来て」
「へ?」
スズは不思議そうな顔で、きょとんとした。見る人が見れば、彼女の顔は少し間抜けな顔に見えたかもしれない。
彼女たちとは別に、アオはケージに屹立しながら、それを黙認していた。
スズは、カエデに問いかける。
「動いて大丈夫なの?」
カエデは、左手の人差し指を口元に当てた。そして、シッと、短く息を吐く。
つまり、カエデは、先ほどの桃色のジャンパーを着た、主任と呼ばれた女性の指示に従っておらず、勝手な行動をしているらしい。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




