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リリムと贖罪  作者: 霧野うみ
初戦 出会い
26/261

命令違反

 この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。



 白衣を着た女性は、スズを不思議そうに見る。

「そちらの方は?」

 スズは鉄骨で組まれたケージに背を預け、両足を左側に寄せていた。そして、彼女は白衣の女性に上目遣いをする。

「え、あの……」

 スズはせき込んだ。

 サクラは、彼女の肩にそっと触れる。

「大丈夫?」

 スズが肩を震わせると、サクラは素早く、その手を離した。

 サクラは、ケージに片膝をついたまま、医療班の職員に答える。

「さっきのCPO(シーピーオー)循環器が止まった影響ですね。バイタルは安定」

 そして再び、彼女は、スズに問いかける。

「せき以外に、どこか痛いところはありませんか?」

 スズは小さく口を開け、あ、とも、えっと、とも言えない声を上げる。そして彼女は、右側に視線を向ける。

「背中を強く打ったんですけど、動けるので、多分大丈夫です」

 目線が合わないスズに対し、白衣の女性は優しく微笑(ほほ)んだ。まるで、少女の不安をほどこうとするように。

「わかりました、(たちばな)さん。この薬は痛みを抑えるものなので、飲んでも安全ですよ」

 スズは唾を小さく飲み込んだ。なぜ、この優しそうな女性が、アオくんやカエデさん、ディスプレイ越しに応えた青年と同じように、自分の名を知っているのかとっさにわからなかったからだ。

「あ、はい……。ありがとうございます」

 スズは鉄骨で組まれたケージに座り込み、彼女に会釈(えしゃく)すると、手渡された錠剤を水で飲み込んだ。

 彼女は、黒髪をかき上げたカエデを、今度は上目遣いで見た。彼女は体育座りをし、落ち込んでいる様子だった。

 スズは立ち上がると、彼女のベッドに近づいた。そして、遠慮がちに、彼女に問いかける。

「あの……カエデさん」

 カエデはその体勢のまま深呼吸をすると、凛々(りり)しい瞳でスズを一瞥(いちべつ)した。

「来て」

「へ?」

 スズは不思議そうな顔で、きょとんとした。見る人が見れば、彼女の顔は少し間抜けな顔に見えたかもしれない。

 彼女たちとは別に、アオはケージに屹立(きつりつ)しながら、それを黙認していた。

 スズは、カエデに問いかける。

「動いて大丈夫なの?」

 カエデは、左手の人差し指を口元に当てた。そして、シッと、短く息を吐く。

 つまり、カエデは、先ほどの桃色のジャンパーを着た、主任と呼ばれた女性の指示に従っておらず、勝手な行動をしているらしい。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


 スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。

 一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。

 一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。

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