医療班 到着
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
下方から再び、金属音が聞こえた。
ディスプレイからは、砂嵐の音がノイズに混じってくる。そのノイズ混じりの声は、先ほどの室長の青年の声だった。
『カエデ……頼むから、カタパルト、あまり壊さないでくれよ』
「わかってるわ」
コックピットのCPOが抜けると、コックピットが再び揺れる感覚が伝わり、上部の扉が開いた。
スズは心の中で安堵した。やっと息ができると、思ったからだ。CPOの中でも彼女は呼吸がなんとかできたが、CPO循環器が一時的に停止したせいで、呼吸が苦しかったのだ。
ディスプレイからは、青年の声が響いている。
『2号機プログの射出を確認』
ウーゼ開発研究主任が明るい声で、『了解』と、室長に返答する。
また室長が、一同に呼びかける。
『医療班、治療急いでくれ』
室長が言い終わると同時に、カエデは言う。
「それより、痛み止めを飲むわ」
カエデは足をもつらせながら後方に向かうと、小さなハッチを開けて、藤色の巾着の中から、市販の痛み止めを口に含んで飲み込んだ。
ディスプレイから、再び、声が聞こえる。
『医療班、到着』
室長は『了解』と答えた。
『悪いが、心配だから言ってるんだ。頼むから、彼らの指示に従ってくれ』
プログの外から、さまざまな声が聞こえる。
「2号機パイロットはこちらへ。主任。こっちです」
「ありがとうございます」
桃色のジャンパーを着た女性が裾をはためかせて、ケージの渡り廊下を急いで駆け抜けてくる。
女性は早速、移動式ベッドの上にいるカエデに近寄った。
「各バイタルは安定してる……呼吸数は正常。大丈夫そう。どこが一番痛いですか? カエデさん」
「軽い頭痛よ。だから平気」
女性は彼女に、重ねて尋ねた。
「鋭い痛み? ズキズキします?」
「ハンマーで叩かれる気分。たまにあるのよ、でも平気。きちんと薬は飲んだわ」
「では、痛みを抑える注射だけしておきますね」
サクラは、シリンダーを一、二度、人差し指で弾くと、首筋に注射針を刺した。
「速効性はありますが、五分だけ安静にしていてください」
カエデは首肯した。
「ええ。わかったわ」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




