カエデの覚悟
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
ウーゼ開発研究主任が、無機質に経過報告を告げる。
『5号機・CPO循環器システム、再起動。再循環を開始。先ほどの揺れの影響はありません』
『現在、CPOの酸素濃度・二十パーセント、酸素飽和度・九十六パーセントを維持しています』
ウーゼ開発研究主任が『了解』と、再び応える。
男性オペレーターが、彼に報告する。
『室長。5号機内に、巨大な熱エネルギー反応を感知』
『わかった。それは放っておけ』
室長に指示をされた男性オペレーターは、承諾できないように一瞬黙り込んだ。しかし、彼は了承した。
『——承知しました』
スズの後方で衣擦れのような音がすると、先ほどまで肩で息をしていたカエデがいつの間にか左手で操縦桿をつかんでいる。彼女の声は、いまだかすれていた。
「どいて……」
スズは瞬間的に、カエデの左手に自分の手を添える。そして、彼女は首を振った。
「ダメだよ。そんな……——君、カエデさんだっけ? とにかく助けないと」
カエデはスズが口を挟む前に、話した。
「私のことはどうでもいいわ。けど、エンジェルは絶対に倒さないと。そうしないと……」
カエデは唇を噛んだ。
きっと、最悪な事態になることは、スズもなんとなく理解していた。彼女は目を見開く。凛とした雰囲気を持つ、彼女のような覚悟が、自分にはなかったからだ。
「ああ……」
再び、ディスプレイが開くと、いつの間にかカエデにパイロットが変更されていることに、スズは気づいた。
「……なんで? 勝手に変わらないでよ!」
スズは先ほどのように再び〈変更〉の場所を押すが、命令を拒否され受けつけてくれなかった。
「…………倒すしかない、か」
スズは奥歯を噛んだ。
「ねえ、作戦とかって——」
カエデがスズをコックピットの背もたれに押し付けるようにすると、すぐに衝撃が来た。5号機が走る衝撃は、コックピットを縦に揺らしているらしい。
「え、何何!? え? そういうのない感じなの? 嘘でしょ?」
アオは、ごめん、とカエデの代わりに謝る。
「カエデさん……急に動くのは危ないと思うな」
カエデはアオのぼやきには答えず、ひたすら目の前を見据えていた。
「入るわよ。スズ」
「あ、うん」
スズは反射的にうなずいたが、カエデに身を乗り出す。
「でも無理無理! ぜーったい、無理! ホントにできないって!?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




