指令室 応答願う
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
そのとき、ディスプレイが開いた。助けを呼べる、とスズは一瞬思った。
だが、スズに背をさすられている彼女は、ぐらりと、体勢を崩した。
「大丈夫? ねえ、君? 大丈夫?」
スズが肩を揺すり、彼女に何度呼びかけても、彼女は横向きの体勢のまま、肩で息をしていて、返事を返せない状態に陥った。
スズも、喉が痛い、と思い始めた。彼女は、せき払いをするが、CPOが喉に入るだけだった。
開いたディスプレイを閉じかけたまぶたで見つめると、〈VOICE・ONLY〉と表示されていた。そこからは、青年の声が聞こえる。
『平気か? 今、酸素濃度の表示を変える。CPO酸素チューブをくわえられるか?』
スズは、青年の声に尋ね返す。
「何? なんて言ったの?」
スズは、早速、先ほどの戦闘服を着た少女が座っていたコックピットにゆっくりと立ち上がって向かい始める。
すると青年は、言葉をゆっくりと区切りながら、応えた。
『前方に車のダッシュボードみたいなやつがある。それを手前に引くと、透明なチューブがあるから、それをくわえてくれ』
アオは、ある方向に指をさす。
「スズ。その灰色のだよ」
スズはうなずく。
「うん。わかった」
ガチャッと、スズが、灰色のダッシュボードのふちを手前に引くと、透明なチューブが円を描いて折りたたまさっていた。
彼女は、それをくわえると、コックピットの背もたれに背中を預けた。
しかし、先ほど、CPO循環器に自分の背中を強打したせいで、彼女は苦痛に顔を歪め、背をさする羽目になった。
「どうすればいいんだろう? あっ、さっきの人! でも、そういえば名前聞いていないや。とりあえず呼ぶか……」
スズは、ディスプレイに向かって呼びかける。
「あの、すみません?」
アオも呼びかける。
「1号機(改2)パイロットの一色アオだ。指令室応答してくれ。指令室? 山田室長? 1号機(改2)パイロットの一色アオだ。指令室、応答願う」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




