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リリムと贖罪  作者: 霧野うみ
初戦 出会い
20/260

CPO循環器

 この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。



 スズは、口の中で小さく自分の名をつぶやくと、〈変更〉に触れる。ピコンッ、と電子音が鳴ると、〈5号機パイロット更新・・・橘スズ〉と再表示された。

 内壁に体を預け、寄りかかっているカエデは、再び、〈CPO(シーピーオー)循環器システム〉を再表示させると、口の中でスラスラと噛まずにつぶやく。

「CPO循環器システム、約七十パーセント。酸素濃度は——」

 彼女は、そこで言葉を途切れさせると、ひとつ息を吸った。

「酸素濃度は、約六パーセント」

 アオが目を細め、ディスプレイに触れると、カエデは呆れるように反論する。

「ねえ、あなた、勝手に何して……」

「君は休んでてくれないかな? 万全を期してない君は似合わないよ。ほら、酸素濃度を八パーセントに調整したから。大丈夫だよ」

 スズにとっては、異国の言葉のようだったが、この自分たちを覆っている液体の酸素を、彼が調整してくれていることはわかった。

 眼前から、何かが光ったと、スズが気づいた瞬間、轟音(ごうおん)とともに、三人は、さらに後方に転がった。

 スズは背中を強打すると、背をえびのように丸めてせき込んだ。

「いったー……たたた……」

 彼女は背をさすろうとするが、指が何かに当たると、振り返る。

 ヒュウウウウン、ガシャンッ、とそれは、音をたてて停止した。

「ねえ、なんか止まっちゃったんだけど……」

 彼女は背をさすろうとするが、指が何かに当たると、振り返る。

「スズ、大丈夫かい?」

 アオは痛みに顔を(ゆが)めていた。きっと、彼がとっさに、彼女を(まも)ったのだろうか。

「うん……大丈夫。ねえ、君はけがしてない? 背中とか痛くない?」

 右側にいる彼女は、背をさすりもせずに、二人の後方を見た。

 スズとアオの後ろと彼女の後ろには、各四枚の羽が付いている換気扇があるのだ。細かい網目のカバーが付いている。カバーが付いているのは、パイロットの髪の毛が巻き込まれないようにするためなのだ。

「ああ……循環器が止まったのね」

 スズは思わず、その黒髪の少女に尋ねる。

「何それ?」

「CPOは、私たちを護ってくれるものだけど、酸素だから循環をしなければならないわ。でも、多分、一次的なものだから……」

 彼女は言葉を切ると、(ひたい)を押えた。スズは、彼女の顔を(のぞ)き込むようにする。

「頭、痛いの?」

 彼女は、ゆっくりと首を横に振った。

「いえ、大丈夫よ。これは、平気……」

 スズは意味が無いと思いながら、彼女の背中をさする。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


 スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。

 一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。

 一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。

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