CPO循環器
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズは、口の中で小さく自分の名をつぶやくと、〈変更〉に触れる。ピコンッ、と電子音が鳴ると、〈5号機パイロット更新・・・橘スズ〉と再表示された。
内壁に体を預け、寄りかかっているカエデは、再び、〈CPO循環器システム〉を再表示させると、口の中でスラスラと噛まずにつぶやく。
「CPO循環器システム、約七十パーセント。酸素濃度は——」
彼女は、そこで言葉を途切れさせると、ひとつ息を吸った。
「酸素濃度は、約六パーセント」
アオが目を細め、ディスプレイに触れると、カエデは呆れるように反論する。
「ねえ、あなた、勝手に何して……」
「君は休んでてくれないかな? 万全を期してない君は似合わないよ。ほら、酸素濃度を八パーセントに調整したから。大丈夫だよ」
スズにとっては、異国の言葉のようだったが、この自分たちを覆っている液体の酸素を、彼が調整してくれていることはわかった。
眼前から、何かが光ったと、スズが気づいた瞬間、轟音とともに、三人は、さらに後方に転がった。
スズは背中を強打すると、背をえびのように丸めてせき込んだ。
「いったー……たたた……」
彼女は背をさすろうとするが、指が何かに当たると、振り返る。
ヒュウウウウン、ガシャンッ、とそれは、音をたてて停止した。
「ねえ、なんか止まっちゃったんだけど……」
彼女は背をさすろうとするが、指が何かに当たると、振り返る。
「スズ、大丈夫かい?」
アオは痛みに顔を歪めていた。きっと、彼がとっさに、彼女を護ったのだろうか。
「うん……大丈夫。ねえ、君はけがしてない? 背中とか痛くない?」
右側にいる彼女は、背をさすりもせずに、二人の後方を見た。
スズとアオの後ろと彼女の後ろには、各四枚の羽が付いている換気扇があるのだ。細かい網目のカバーが付いている。カバーが付いているのは、パイロットの髪の毛が巻き込まれないようにするためなのだ。
「ああ……循環器が止まったのね」
スズは思わず、その黒髪の少女に尋ねる。
「何それ?」
「CPOは、私たちを護ってくれるものだけど、酸素だから循環をしなければならないわ。でも、多分、一次的なものだから……」
彼女は言葉を切ると、額を押えた。スズは、彼女の顔を覗き込むようにする。
「頭、痛いの?」
彼女は、ゆっくりと首を横に振った。
「いえ、大丈夫よ。これは、平気……」
スズは意味が無いと思いながら、彼女の背中をさする。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




