5号機パイロット・〝橘スズ〟
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
「大丈夫よ」
凛とする声をかけられた。続けて、アオの声もかけられる。
「大丈夫。大丈夫だよ、スズ」
スズは肩で息をする。アオが貸してくれた手に彼女はその手をつかむ。
「ありがとう、アオくん。あの、君は? ……もしかして、さっきの女の子?」
バシュウウッ、と機械音がすると、スズは上を見上げた。上部の蓋らしきものが閉まったらしい。
そのとき、スズは、やっと、座っている黒髪の少女を見ることができた。黒髪?
スズは、コックピットの背もたれに自らの手をつかませる。
あの子? なぜ、ここにいるの? 途端に、頭痛とめまいが、彼女を襲ってきた。どうして……? 彼女は、たった今、頭をよぎった考えを振り払おうと、かぶりを振るが、健康的な肌はみるみる蒼白になり、呼吸もまた荒くなった。
「ねえ」
戦闘服を着用している黒髪の少女に、スズは話しかけられる。
「ん? どうしたの?」
スズが彼女に聞こうとする間に、彼女が深呼吸をする。すると、二人の目の前に、透明なディスプレイが開き、〈5号機パイロット・橘スズ〉という文字が現れる。
「え? 何? 5号機?」
スズは、5号機パイロット、という文言に目を見開く。
「パイロット? 私が?」
彼女がコックピットに目をやると、灰色の戦闘服をまとった少女がいる。
「ねえ? 大丈夫? どこか痛いの? けがした?」
彼女は、額に左手を当てていた。その声は静かだったが、かすれていた。
「大、丈夫。今、助けを呼ぶわ」
彼女は、コックピットに手を置きながら、よろよろと、後方よりの内壁によりかかる。そのまま、眼前にディスプレイを出すと、〈CPO循環器システム〉を表示させる。
スズは、ディスプレイを指さす。
「これは?」
こぽこぽと、彼女たちの口元から、薄赤く、小さな泡が吐き出される。これにはカエデではなく、アオが答えた。
「CPO。僕たちを護るものだよ」
彼女はディスプレイに触れ、CPOの調整を開始したが、すぐに、警告音が鳴った。
スズは首を回す。
「何? あっ……5号機パイロットの搭乗者の変更?」
彼女は、玉のような汗をかいた顔でスズを見る。
「あなたになっているわ。ここの〈変更〉ってボタンに触れてくれる?」
スズは彼女の黒い瞳を避けるように顔をうつむかせたが、そっと、ディスプレイに触れた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




