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リリムと贖罪  作者: 霧野うみ
初戦 出会い
19/260

5号機パイロット・〝橘スズ〟

 この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。



「大丈夫よ」

 (りん)とする声をかけられた。続けて、アオの声もかけられる。

「大丈夫。大丈夫だよ、スズ」

 スズは肩で息をする。アオが貸してくれた手に彼女はその手をつかむ。

「ありがとう、アオくん。あの、君は? ……もしかして、さっきの女の子?」

 バシュウウッ、と機械音がすると、スズは上を見上げた。上部の(ふた)らしきものが閉まったらしい。

 そのとき、スズは、やっと、座っている黒髪の少女を見ることができた。黒髪?

 スズは、コックピットの背もたれに自らの手をつかませる。

 あの子? なぜ、ここにいるの? 途端に、頭痛とめまいが、彼女を襲ってきた。どうして……? 彼女は、たった今、頭をよぎった考えを振り払おうと、かぶりを振るが、健康的な肌はみるみる蒼白(そうはく)になり、呼吸もまた荒くなった。

「ねえ」

 戦闘服を着用している黒髪の少女に、スズは話しかけられる。

「ん? どうしたの?」

 スズが彼女に聞こうとする間に、彼女が深呼吸をする。すると、二人の目の前に、透明なディスプレイが開き、〈5号機パイロット・橘スズ〉という文字が現れる。

「え? 何? 5号機?」

 スズは、5号機パイロット、という文言に目を見開く。

「パイロット? 私が?」

 彼女がコックピットに目をやると、灰色の戦闘服をまとった少女がいる。

「ねえ? 大丈夫? どこか痛いの? けがした?」

 彼女は、(ひたい)に左手を当てていた。その声は静かだったが、かすれていた。

「大、丈夫。今、助けを呼ぶわ」

 彼女は、コックピットに手を置きながら、よろよろと、後方よりの内壁によりかかる。そのまま、眼前にディスプレイを出すと、〈CPO(シーピーオー)循環器システム〉を表示させる。

 スズは、ディスプレイを指さす。

「これは?」

 こぽこぽと、彼女たちの口元から、薄赤く、小さな泡が吐き出される。これにはカエデではなく、アオが答えた。

「CPO。僕たちを護るものだよ」

 彼女はディスプレイに触れ、CPOの調整を開始したが、すぐに、警告音が鳴った。

 スズは首を回す。

「何? あっ……5号機パイロットの搭乗者の変更?」

 彼女は、玉のような汗をかいた顔でスズを見る。

「あなたになっているわ。ここの〈変更〉ってボタンに触れてくれる?」

 スズは彼女の黒い(ひとみ)を避けるように顔をうつむかせたが、そっと、ディスプレイに触れた。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


 スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。

 一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。

 一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。

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