カエデとの電話4
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズが、カエデから受けた話によると、支部の職員やパイロットたちは、エンジェル戦の最前線で、命の危機に瀕した人類を何度も救済している。
そのため、まるで冷水を顔にかけられたような、目を疑う金額になっているというらしいのだ。
それにしても、パイロットの基本給付金が破格なのは、自分たちが最前線に立ち、そのたびに、何度も自分たちの命を懸けてエンジェルを倒しているから、飛び抜けて高額になっている、というのだ。
スズは、その金額を脳内でも反芻してみたが、納得できるような、よくわからないような気がした。
これは、ドイツ支部やアメリカ支部などのほかの支部でも、ほぼ同額がもらえるらしい。
「ん? 職員でも基本給付金で、一千万円なんだ……へえ、すごいなあ」
『そういえば、スズ。足は大丈夫なの? さっき、すごい音したから、どこかぶつけたのかしら?』
「あ、うん。大丈夫だよ」
『けがには気をつけて。あ、痛かったら、林主任から湿布をもらったらどうかしら?』
スズは給与明細に気を取られて、大丈夫だよ、と生返事でうなずく。それから、また、視線を紙に落とした。
「ええっと、危険手当は、一千万円プラスで前後——大体、五百万円から最大で一千五百万円」
スズは、あっ、と目を止めた。
「この、『地域調整手当』や『赴任手当』は、支部の方がもらえるの? しかも、地位が上がるごとに六百万……。え? 『指令室室長はプラス二百万円給付』って、ハルトって、プラスで二百万ももらってるの?」
『そうね。でも、ウーゼや「旧第二東京都市」の修繕費は高いのよ』
「『旧第二東京都市』? それって……この都市の前身じゃ……カエデってそこにいたの?」
スズは携帯電話をいったん耳から離すと、また耳に、黒い携帯電話を近づける。
「カエデ? 大丈夫?」
『え……ええ。平気よ』
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




