カエデとの電話3
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
「だ、大丈夫、大丈夫……ありがとう。いったー……」
だが、彼女は、その痛みに悶絶する間もなく、額に手を当てた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。カエデ? 何言ってるの? さ、三千万円? 何これ、夢?」
スズは頬をつねったが、つねったところが痛いだけだった。
「夢じゃない……」
『ええ。そうね。夢じゃないわ』
スズは声が出なかった。
「…………」
『スズ? どうかしたの?』
カエデに尋ねられた彼女は、うなじに触れる。
「あ、ごめん。ちょっと、驚きすぎて……。ありがとう、カエデ。教えてくれて助かったよ」
『いえ。また明日ね、スズ』
スズは、うん、とうなずいた。
「また、明日ね。カエデ」
彼女は通話ボタンを押して電話を切ろうとしたが、彼女自身の声がすんでのところで止める。
「ねえ」
『何? スズ』
スズは、痛む膝をさすりながらダイニングテーブルに戻り、自席につく。
「そういえば、金額って、何でわかるの?」
『玄関に給与明細がないかしら? 受け口に金額が書かれた紙があるはずよ』
「わかった」
スズは一葉の紙を手に、ダイニングテーブルに戻ってきた。
彼女の黒い瞳に映ったその紙には、目を疑うほどの金額ばかりが並べられていた。
「——って、何これ? ホント、日本の国家予算とかって、どうなってるの……?」
スズは急に、自分の口の中に染み込んできた唾を、ゴクリと飲み込んだ。それに、なんだか、両手の手のひらも汗ばんだみたいだった。
彼女はもう一度、唾を飲み込んでから、その破格の金額を口に出した。
「パイロット基本給付金が三千万円。うわ……こんな金額のお金、もらえないよ……」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




