私があなたを護る
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
数分後。
カエデは戻ってきたが、彼女は先ほどよりも、苦しそうな顔をしている。
スズはもどかしい気持ちのまま、新たに思った。ハルトと何かあったのかな?
カエデは先ほどの悲痛そうな声のまま、スズに問う。
「私、あなたが主任に叱られたって言ったとき、変だったわよね?」
ふいに、カエデから問いかけられたスズはもろ手を振った。
「そんなことないよ」
カエデは、厚さが薄い唇を軽く噛んだ。
「私の記憶にある主任の顔は、心配している顔ぐらいしか見たがことないから……自分でも変だと思うけれど、そんな風に、あなたを叱ってくれる彼女が嬉しいのよ」
「何か、あったの?」
スズは、顔をうつむかせる。
「いや、言いたくないならいいんだけど……」
スズは、ますます言葉に到底出せないもどかしさを心の中で積み上げていた。
カエデは首を振る。
「……ごめんなさい」
少しの沈黙のあと、彼女は続けた。
「いつか話せるようになったら……話しても?」
「うん。いいよ」
「いつかあなたの話も、ユキの話も、聞いてみたいわね」
カエデは、穏やかな微笑みを口に浮かべる。
スズは少し放心した。そして、あることに思い当たると、彼女は顔をうつむかせて、床に目を伏せた。
「あのとき——」
それから、唇を少し強く噛みしめ、拳を強く握った。
「私は、何もできなかったんだ」
彼女のそばにいるカエデは、両手を伸ばして握った拳を包む。
「……久遠さん?」
え、何? どうしたんだろう?
「私は、あなたのご両親を助けられなかったの」
「え?」
助けられなかったって、また……。
「真白さんは、お父さんのこと知ってた。久遠さんも?」
カエデは、スズの肩に手を置いた。
その瞳は決意をしたように、固く揺らがなかった。
「スズ。私があなたを護るわ。たとえ、私の存在が消えても」
スズは、彼女自身が自分に言い聞かせるような、決意した言葉と表情が、今のカエデを物語っている。消えてもって……久遠さん、どうして?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




