医務室の会話5
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
ハルトは、灰色の瞳を伏せながら同意する。
「そうだよな」
「私もよ。スズ」
スズは、え、と意外そうに顔を上げて、独白のように話すカエデを見る。
「いつも、心にガラスが割れる音がしてるの」
「どうして?」
カエデはまた斜め左下を向く。
「どうしてって……わからないの」
彼女は、両手の指を組んで遊ばせる。
「でも、あの音……プロテクトに似てるわ。ほら、ピシシッ、って」
カエデは、凛とした声で答える。
「易々と、他人に土足で踏み入られるみたいに」
スズはその言葉を聞き、胸が少し痛くなった。ハルトも、心痛な顔をしている。
「俺、指令室に戻ってるよ」
カエデはちょっと悩むように言葉を切ったが、その場の雰囲気にただよう悲痛な声で言う。
「……ハルト、待って」
「悪い。待たない」
カエデは、自分の言葉を否定したハルトを追って、医務室を出て行った。
スズはもどかしいような気持ちのまま、パイプ椅子からじっと動けずにいた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




