医務室の会話4
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
「もう一個聞いていい?」
カエデは首肯する。
「ええ。何?」
スズは小首をかしげた。
「なんで、顔そらしてるの?」
カエデはまた驚いたような表情をするが、今度は、頬を少し赤く染める。
スズは、またきょとんとした。
「え? あの、私、何か変なこと言ったかな……?」
「私、褒められた経験があまりなくて……だから、素っ気なくなるのよ」
スズはふっと頬を緩めるが、カエデは恥ずかしそうだった。
「あの……笑うのやめてくれない?」
「え? 笑ってないよ。久遠さん」
スズは、ふふっ、と口角を緩め、曲げた人差し指の節を唇に当てた。
「笑ってるじゃない」
「ごめんごめん」
「ハルト。あなたもよ」
カエデにとがめられたハルトは、右足をベッドの上で立てて、笑いをこらえていた。
「悪い。カエデ……」
ついに彼は耐えきれず、
「はははっ……」
と、胸の上に文庫本を乗せたまま、こめかみを左手で押さえて、双眸を隠している。
「いや……ホントに悪い。黙っておく」
「あ、そうそう。ねえ、久遠さん。私の搭乗回数知ってる?」
カエデは、あごに手を当てる。
「確か、五、六回かしら」
スズは首を振る。
ハルトはベッドの上で起き上がると、否定した。
「いや。十三回だ」
カエデは面白くて、笑うように言った。
「ええ? そうなの?」
カエデがスズたちパイロットと2号機に搭乗する以前、別なウーゼに搭乗していたが、しかし、そのときのパイロットが自ら志願して搭乗した回数でも、数十回の回数は聞いたことがなかった。
スズは気まずそうにうなずく。
「サクラさんにすごく叱られちゃったよ」
彼女は手をもじもじさせる。
「サクラを怒らせたの? あなた」
「いや、そうなんだけど……。ていうか、久遠さん、嬉しそうじゃない?」
カエデは驚いたあとで、少し左下に視線をそらす。
「そう、よね……あなたは、嬉しくないわよね」
「うん……」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




