医務室の会話3
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
こんこんと眠っていたカエデは、薄目を開ける。すると、驚いたようスズを見てから、彼女とつながれている右手を見た。
「……ずっと、ここに?」
彼女は首を横に振る。
「ううん」
そして、スズは、穏やかに話を切り出す。
「ずっとじゃないよ。目が覚めてよかったね、久遠さん」
「……そう」
それから、スズはカエデの向こうのベッドを見た。
ベッドの上で起き上がったカエデも、彼女につられて、そのベッドを見る。
カエデが起き上がったとき、スズは彼女の手助けをした。
二人はそろって、ふっ、と微笑んだ。
ハルトが、カエデの隣のベッドで、いつの間にか読書していた本を胸に落としていたからだ。そのまま、彼は眠りに落ちたらしい。
利き手側の左腕を、枕の下の支えにして、その右腕は、文庫本の上に添えられていた。その顔は、まるで少年のような顔であり、それは彼にとって、年相応の顔とも言えた。
カエデはぐっすりと眠っている彼を見て、スズに向ける顔とはまた違う、安堵するような顔をしていた。
実際、カエデは安堵していたのだ。カエデはハルトが、やっと眠れたのね、と、考えていたからだ。
スズだけではない。
ハルトもカエデもユキも、誰もが心のどこかで傷をもっているのだ。
それは、まるで、底が見えない深淵のように。
スズは頬をかいた。
「あのさ……久遠さんって、本が好きなの?」
なぜか恥ずかしそうにする彼女からの質問に、カエデは瞬きをした。
彼女は、そうしたかと思えば、恥ずかしそうに小さな声で答えた。
「それも好きよ。でも、私はプディングも好きなの」
スズはきょとんとする。
「何、それ?」
「プリンよ。でも、元々、甘くなかったそうなの」
「え? そうなの? へえ。詳しいんだね」
カエデは、ふいと顔をそむけた。
「ええ……まあ」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




