医務室の会話2
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
「戦争はしたくないな」
スズは、彼に同意するように首肯した。
「じゃあ、させないようにすればいいんじゃない? これって、すごく難しそうだけど」
「簡単だ。今から誰かが俺たちを洗脳させるか、人間が滅ぶかだよ」
「それ、できるの?」
スズが苦笑して聞くと、ハルトは顔をそらした。
「できたら、やっぱり簡単に、俺たちが滅ぶよ。まあ、そんなこと絶対にさせないけどな」
「いいね、それ。ハルトっぽい」
スズは笑ったが、独り言のようにぽつりとつぶやいた。
「私にもできるのかな?」
ハルトは真顔になって、先ほどとは打って変わって真剣な口調になる。
「それをする覚悟さえあればな」
スズはハルトの真剣さに圧倒されたが、唾を飲み込んでもろ手の拳を握る。
「じゃあ、私、頑張るよ。私たちが、みんなが少しでも、よりよく生きられるように、この世界をよくしたいな」
「よりよく?」
ハルトが問うと、スズは、うん、と首肯する。
「よりよくなんて、自分の感情で決まるんだから、そんなのいちいちスズが頑張っていたら、疲れるぞ?」
それを聞いたスズは、少しだけ口を尖らせた。
「ハルトって、疲れるってばっかり言うね」
「いや、そればっかりじゃないからな? 自分の感情は自分で決めたいよ」
「ハルトって、冷静じゃないの?」
「さあ、そのときになってみないとわからないな。ただ……俺の歳の割には、色々なことがありすぎた。たとえば、この歳で仕事してること。あとは、見送った人がいること」
ハルトは、左斜め下を見た。それから、彼は、カエデの横顔を見る。
彼女は疲れているのか、よく眠っていた。それに、カエデの手には、あざらしきものが薄くできていた。どこかに、手をぶつけたのだろうか。
「それに……カエデは今、眠ってるけど、やたらと苦労が多いんだ。誰かが隣にいてやらないと、精神的にダメになる」
そう言った彼は、灰色の目の下に少し濃いクマができていた。乾燥した彼の唇は、少しひび割れているらしい。
スズは奥歯を噛んだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




