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リリムと贖罪  作者: 霧野うみ
第三戦 他人との距離
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医務室の会話



 医務室の自動扉が開いた。

 スズが、その方向を見ると、スーツ姿の青年が立っていた。彼は、カエデとスズに向かってくる。

 彼は、スズの隣にパイプ椅子を運ぶと座った。右手首に、銀ベルトの腕時計を着けている。彼が着けている腕時計は、白いアラビア数字に、青い文字盤の高級そうなものだ。

 ハルトだ。

 その彼の声は静かで、穏やかだった。

「まだカエデは寝てるのか? スズ」

 彼女はハルトを見て、うなずく。

「あ、うん」

「そっか」

 スズはカエデを見て、首肯(しゅこう)する。

「うん」

 ハルトはベッド脇の茶色いチェストに、何かを置いた。

 それは文庫本だ。二冊ある。表紙がB5サイズでそろっている。しかし、その横幅は、分厚いものから薄いものまであった。

「ハルト。本好きなの?」

「まあ、俺も読むな」

 彼は、腕時計の銀ベルトを調整していた。彼の手首には、ベルトの締め具合がきつかったのだろうか。

「けど、こういうの、(もっぱ)ら好きなのはカエデだよ。置いておくと、いつの間にか、読まれて返ってくる。スズは? 本好きなのか?」

「うん。好きだよ」

「最近は、どんな本を読んだんだ? ミステリー? それか、純文学? ホラーなのか?」

「ホラーなんて、好きじゃないよ。ハルト。怖いもの」

 ハルトは吹き出したが、いまだにカエデが起きないので、笑いをこらえていた。

「俺もだよ。怖いよな」

 スズは図書室にいるように静かにしながら、もろ手を口に当てて驚いた。

「ええー? そうなの? 怖いものないかと思ってた」

「怖いものか。急に大きな音とか、後ろからお化けがでてくるとかか? ほかに怖いって言えば……」

 彼は考えるように、あごに左手を当てた。


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