手のひらを染めて
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
少女のかわいらしい顔には、それに見合うほどの美しい白髪が備わっている。しかし、彼女の口から出た言葉は、少女のものとは思えない、あまりにむごたらしく、そして、重々しいものだった。
「ねえ。私はこれからも人間を殺し、この手をさらに血に塗れさせるの?
そのとき、途方もない人々が犠牲になる。それは、犠牲という文字がいけにえで形作られているから」
犠牲という文字は、牛偏、つまり、祭儀で使用されるいけにえだ。
ハルトは苦々しく唇を引き締めた。
これはまだうわさだが、部下のサクラが、汐波司令からの直接命令で何かを行っているらしい、と、彼は聞いていた。
彼にうわさを持ち込んだ人物は、もちろん一色アオだ。
ハルトは、あんなに議長に叱られたのに、懲りずにまだやってるのか、と口をへの字にわずかに曲げた。
少年はどこで買ったのか、カップアイスをふたつ持ってハルトの前に現れた。だが、ありがたくアイスを受け取ったハルトが、うわさに驚いたのは、そのあとだった。
約五ヶ月後の十二月、おそらくだが、ウーゼのテストが行われるらしい。だか、しかし、それはこの日本支部では通常のことであった。
重要なのはそのあと――そのウーゼのテストが『全機体交換テスト』であり、さらに、新装備である『パイロット補助装置(仮)』が、そのとき、ウーゼのコックピットに組み込まれるというのだ。
まだ、ハルトの耳に入ったばかりで、『パイロット補助装置(仮)』がどういうものかは、室長である彼も知らない。
まだ疑惑ではあるが、これを知っているのはきっと、司令の汐波アカネと、ウーゼ開発研究主任の林サクラの二名だけだ。
これで、パイロットの予備は補充されたが、一抹の不安は、どうしても拭いきれないということらしい。
ウーゼの基礎装備である長方形型のNコードのように、安定した長期の稼働を望められればいいのだが、このうわさの元凶、『パイロット補助装置(仮)』はそうもいかなかそうだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




