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リリムと贖罪  作者: 霧野うみ
第三戦 他人との距離
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つらい思いを心の奥底に閉じ込めて

 この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。



 スズがどこかへ向かったあと、ユキが口火を切った。

「どうしてスズは、私のことを、嬉しい、なんて言うの?」

「そんなこと聞いてどうするんだよ……多分、そう思ったからとか?」

 ハルトは立ち上がったが、また、ユキの近くに座る。

「ユキは、あいつのことどう思ってるんだ?」

「……会いたいけど、会いたくなかった。スズに謝りたいの」

「それ、謝ればいいんじゃないか?」

 ユキは、ふるふると首を振る。

「スズには言えない……まだ、〝実験〟のことを思い出すって、サクラが言ってた」

 ユキの呼び方に、ハルトは、あっ、となる。それから彼は、少し顔をうつむかせる。

「なあ、ユキ。苦しかったら言えばいいのに、って思うことないか? なんでみんな、何も言わないんだ? スズも、ユキも、カエデも……」

「自分のつらい思いを心の奥底に閉じ込めてしまえば、楽だから」

 ユキはハルトに顔を向けた。

 ハルトの顔は見えなかったが、彼女の心はどこか暗くなった。

「さっき、言ってたこと——それは、あなたもなの?」

 ハルトは、眉をひそめて言う。

「なんでそこで、俺が出てくるんだよ?」

「さっきスズに話しかけたのは、心が暗くて苦しくなったから? スズが過去に深い傷を負って、それを思い出したから?」

 ユキに問われたハルトは、驚いたあとで再びうつむいた。

「俺は、あのとき、助けに行っていれば死ななかったんじゃないか、って何度も考えた」

 ハルトは、拳をぎゅっと握って床に押しつける。

「ごめんなさい……私のせいでみんなが……」

 ハルトはユキの言葉を遮る。

「やめろ」

 ハルトは深いため息をついてから、無言でユキの頭を撫でる。

 ユキは少しの間従っていたが、やがて、ぽつりとつぶやいた。

「温かい……あの二人も、よくこうして私の頭を撫でてくれた」

「本当に、優しい人たちだったな」

 ユキはハルトの頭を撫でる。

 ハルトは眉をムッとさせたが、ユキは撫で続ける。

 やがてハルトは、少し眉を下げ、いつもの不満そうな表情ではない顔を覗かせた。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


 スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。

 一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。

 一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。

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