ハルトの気遣い4
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
「い……いつから?」
ユキは少し驚いているような、恥ずかしそうな表情をする。
「……スズが私のベッドを間違えたって、ハルトが言ってたところから聞こえてた」
つまり、つまり、さっきのことを真白さんに全部聞かれてたってこと⁉
「……ねえ、ハルト?」
「ん?」
スズは、ハルトに呆れたように大声を出す。
「ん? じゃないよ! なんで言ってくれなかったのさ? 意地悪のつもり⁉」
「いや……言ったら、面倒くさいことになるだろうな、って思ったから……」
スズは、ハルトの肩を激しく揺さぶる。
「そういうことは、先に言ってよ⁉」
ハルトは両手を胸の前に出して、落ち着け、という姿勢をとっている。彼の右手首に着けられた、銀ベルトの腕時計は高級そうだった。それは、白いアラビア数字が円上に規則正しく並ぶ、青い文字盤だった。
「わかった、わかった。悪かったって。もうしない」
スズは、ハルトの肩を揺さぶるのをやめ、訝しげに首をかしげる。
「ホントに?」
ハルトは、ああ、と言った。
「その時計、高そうだね」
スズは唇を尖らせたまま、ハルトの高級そうな腕時計に目をやる。
「ん? ああ、これな。もらったんだ。プレゼント」
だが彼はどこか寂しそうに言ったあと、その高級そうな時計に向かって悪態をついた。
「——たく、あの人、ホントに世話のやける人だったな……。まあ、前の室長だよ」
それから彼は、近づいてきたユキを見る。ユキは状況が落ち着いたと判断したのか、スズの隣に座る。
「スズは、この間から私のことを避けてるから、嫌いなのかなって思った」
ユキが体育座りをすると、少し背中が丸まり、その両手は膝の少し下で組まれる。
「え? 嫌い?」
スズは、ユキの不思議そうな表情を見る。
「違う?」
「うん。違うよ? それに、なんで、私が真白さんを避けるの?」
「スズは、ここ数日どこに行ってたの?」
スズは、髪の後ろをかきながら答える。
「5号機なんだ。でも、あのあと、こっぴどく怒られちゃって……」
ユキがまた尋ねる。
「あのあと?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




