ハルトの気遣い
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズは廊下を歩いたが、突然、ピタリと止まった。廊下の床に、彼女の暗い影が落とされて映った。
スズは、ふとその場に座り込むと、膝を抱えてため息をつく。まだ私が知らない真白さんや、久遠さんや、みんながいる……まだ私には、知らないことがあるんだな……。
スズは、頭に何かを置かれると上を見る。
「うわっ⁉ な、何——冷たっ」
スズは、支部の制服らしきものを着ている青年に、ペットボトルの水を頭の上に一瞬だけ置かれた。
「何、悩んでんだ、スズ? ほら。これ飲めよ」
目の前の青年は、少し誇らしげな顔をすると、今度こそ、スズにペットボトルを差し出す。
「ハルト? あ、ありがとう」
スズの隣にハルトは座り、スズは目で追った。
「あのさ、疲れてる?」
スズが問いかけると、ハルトは驚いた顔をし、思わず頬をふっと緩ませた。
「え? どうしたの? ハルト?」
スズに尋ねられたハルトは、ひとつせき払いをする。
「大丈夫だ。ただちょっと……疲れただけだから」
そう言い終えたハルトは、左斜め上を見た。そして、あまり動じない彼がうんざりするほど緊張した、ノヴァ本部での聴取を、彼自身、脳裏に蘇らせる。
ハルトはアオとともにノヴァ本部に向かい、結局、グーテンに厳重注意されただけだった。
彼自身、よくもまあ、あの議長に口上だけの注意で済んだものだ、と考えた。最悪の場合、国連軍本部会議直々に、ハルトの解職を書状で伝達されると思っていたからだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




