過去は深く、思い出したくないもの
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
リリムは、今しがた浮かんだ思いを消し去るかのように、頭を左右に振る。
そして、彼女は、ぽつりとつぶやく。
「彼女にとって、過去はとても深く……もう二度と思い出したくないもの」
——まるで、自分に言い聞かせるかのように。
ポタタッと、こぼれ落ちた液体が床を濡らした。
リリムがそれに気づき、思考を言葉にする。
「これは……?」
初めて……いいえ。見たのは、あの〝実験〟以来ね。しかし、リリムは、顔をうつむかせたまま、誰に言うわけでもなく言葉に出す。
「ソウマとナギサを救えなかった……。だから、これは、私の償い」
リリムは優しい声で話す。彼女は、首を横にそっと振った。
「だから、泣くことで私の心を癒す。そして忘れればいい」
リリムは、すうっと息を細く吐く。
「私の、誰かの、つらく苦しい思い出が、いつかヒトに話せるようになるまで」
彼女は、カエデの唇の端を上げる微笑みを、頭の奥に思い浮かべる。
赤く透明な瞳の裏には、顔をうつむかせたままの女性が映る。
「私は、私たちを一人残らず皆殺しにしたいと、今でも思っているの?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




