スズとリリム
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズは、ユキを半ば支えながら右手で携帯電話を取り出すと、指令室にかける。
電話の相手は、スズだと気づいた。
『もしもし。スズちゃん、どうしたの?』
スズは、サクラの返事が聞こえてから、すぐに伝える。
「サクラさん、真白さんが意識を失って」
『え? どんな風に倒れたの? どこかに頭は打ってない?』
「はい、頭は打ってないです。さっき、グラッて倒れたんですけど、その前に——」
ユキが少しふらついて左手で頭を抱えながら立ち上がると、スズは安堵する。
「サクラさん。真白さんが目を覚ましました」
スズの予想では、サクラは喜んでくれると思ったのだが、そのあとの彼女の声は不思議そうだった。
『え? 本当?』
「え?」
スズは首を少しかしげた。何かあったのかな? なんで?
『でも、一応心配だから、そっちに向かうね』
スズは胸を撫で下ろす。
「はい。ありがとうございます」
スズは、携帯電話の通話ボタンを押して切った。
「真白さん、大丈夫?」
スズは、立ち上がったユキの両肩を支える。
彼女は、赤い瞳でスズを見た。しかし、彼女には、その瞳が、どこか虚ろに思えた。
スズの目の前にいる彼女は、自分の体を、じろじろと見慣れないように見回した。
彼女は、制服の灰色スカートの裾を、太もものところまでたくし上げようとしたが、それは、スズが慌てて止めた。彼女は無言で、スズを見る。
眼前の彼女は、スズに興味を失ったのか、今度は、深紅色のネクタイをもの珍しげに見ている。それから、彼女は、ダイニングテーブルやキッチンに首を巡らせている。
スズは、彼女に声をかけようかと迷っていた。
「…………」
彼女は冷静な声で、呆気にとられているような、不思議に思っているような少女に、確認を行うように声をかける。
「あなた…………スズ?」
スズはうつむいたまま、ふと、名前をつぶやいた。
「……リリム…………」
彼女は眼前の光景を、信じられないという風に、その双眸を見開いていた。
でも、私はあのとき、死んでもよかったんだ…………、とスズは、少し拳を握る。
「〝特別なウーゼの子〟。スズ——あなたは生きて」
スズは勢いよく、リリムを見る。彼女の瞳は、彼女の心を透かしているような、赤い色だった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




