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リリムと贖罪  作者: 霧野うみ
第三戦 他人との距離
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スズとリリム

 この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。



 スズは、ユキを半ば支えながら右手で携帯電話を取り出すと、指令室にかける。

 電話の相手は、スズだと気づいた。

『もしもし。スズちゃん、どうしたの?』

 スズは、サクラの返事が聞こえてから、すぐに伝える。

「サクラさん、真白(ましろ)さんが意識を失って」

『え? どんな(ふう)に倒れたの? どこかに頭は打ってない?』

「はい、頭は打ってないです。さっき、グラッて倒れたんですけど、その前に——」

 ユキが少しふらついて左手で頭を抱えながら立ち上がると、スズは安堵(あんど)する。

「サクラさん。真白さんが目を覚ましました」

 スズの予想では、サクラは喜んでくれると思ったのだが、そのあとの彼女の声は不思議そうだった。

『え? 本当?』

「え?」

 スズは首を少しかしげた。何かあったのかな? なんで? 

『でも、一応心配だから、そっちに向かうね』

 スズは胸を撫で下ろす。

「はい。ありがとうございます」

 スズは、携帯電話の通話ボタンを押して切った。

「真白さん、大丈夫?」

 スズは、立ち上がったユキの両肩を支える。

 彼女は、赤い瞳でスズを見た。しかし、彼女には、その瞳が、どこか(うつ)ろに思えた。

 スズの目の前にいる彼女は、自分の体を、じろじろと見慣れないように見回した。

 彼女は、制服の灰色スカートの裾を、太もものところまでたくし上げようとしたが、それは、スズが慌てて止めた。彼女は無言で、スズを見る。

 眼前(がんぜん)の彼女は、スズに興味を失ったのか、今度は、深紅(しんく)色のネクタイをもの珍しげに見ている。それから、彼女は、ダイニングテーブルやキッチンに首を巡らせている。

 スズは、彼女に声をかけようかと迷っていた。

「…………」

 彼女は冷静な声で、呆気にとられているような、不思議に思っているような少女に、確認をおこなうように声をかける。

「あなた…………スズ?」

 スズはうつむいたまま、ふと、名前をつぶやいた。

「……リリム…………」

 彼女は眼前の光景を、信じられないという風に、その双眸(そうぼう)を見開いていた。

 でも、私はあのとき、死んでもよかったんだ…………、とスズは、少し(こぶし)を握る。



「〝特別なウーゼの子〟。スズ——あなたは生きて」



 スズは勢いよく、リリムを見る。彼女の瞳は、彼女の心を透かしているような、赤い色だった。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


 スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。

 一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。

 一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。

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