〝実験〟
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズの喉は、すでに乾いていた。
「どうして……どうして、真白さんが助けられなかったの? なんで?」
ユキは、うつむいた顔を上げて少し驚く表情をする。だが、スズは、なぜユキが驚くのかわからなかった。
スズには、そんなユキの表情は初めてで、また頭の中に疑問が次々と浮かんでいた。
今度のユキは、少し顔をうつむかせて唇を少し噛む。
「〝実験〟」
一瞬、何も音が聞こえなかった。
スズは息を飲んで彼女の言葉を繰り返そうとするが、いまだに喉が乾いていて、唾を飲みこんだ。また言葉を詰まらせながら、ユキに問いかける。
「〝実験〟……なの? なんで、どうしてあのとき、リリムは私を助けたの?」
再び訪れた沈黙のあと、ユキは続ける。
「あなたを助けたかったから」
「私を? でも……」
スズを遮ってユキは続ける。
「私は、存在が消えてもいい。だから」
それからのユキは、誰かに話すようにつぶやいた。
「ダメ。あなたは消えてはいけない。ごめんなさい」
ユキの唇は、小さく言葉を紡ぐ。
スズには、その〝ごめんなさい〟は、どこか儚げで泣きそうな声に聞こえたような気がした。目の前の少女が〝真白ユキ〟ではなく、知らない彼女に見えた。
「真白さん?」
ユキは、まっすぐスズを見る。少し伏せ気味だったユキの瞳が、スズの瞳に焼き付く。
彼女の瞳は赤だ。燃える炎のような赤い色、もしくは宝石のような色だ。
「ん? どうしたの?」
スズの疑問に答える間もなく、ユキはまぶたを閉じた。
彼女は、グラリと倒れた。時間は数分だったが、スズには数時間に感じられた。驚いたスズは、慌てて、ユキの体を抱きとめた。
彼女は必死に、ユキに呼びかける。
「真白さん? ねえ、真白さん? 誰か……誰か呼ばないと……」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




