助けられなかった
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズはうなずき、少し伏せ目になったユキの顔を見るが、それはいつか会ったあの白髪の少女に、どこか似ていた。だが、自分自身の心臓が嫌に大きな音を鳴らす。
「謝らなくていい」
リリムは、スズの頭を撫でようと手を伸ばしてくる。
スズは息が詰まった。両親が消えたように、私も消えるのだろうか、と彼女は考えた。
スズが彼女の手を避けるようにすると、カエデにぶつかった。
「ご、ごめんなさい……」
頭の中では、疑問が浮かんでいた。
なんで? なんでまた思い出すんだろ……? スズが箸をおざなりにした手や、彼女の今のつらそうな表情は、ユキには不思議に思えた。
気になったユキは、スズに尋ねてみた。
「スズ。どうしたの?」
スズは、顔をうつむかせながら眉と唇の端を少し下げている。
「ううん。なんでもないよ」
壁時計が、秒針をカチコチと鳴らす。
スズは黙った彼女をふいに見ると、ユキは顔をうつむかせていた。
「真白さん? どうしたの?」
ユキはおもむろに、その小さな口を開いた。
「……ソウマに会ったことがあるの」
それって——お父さんの名前⁉
「な、なんで⁉」
スズが勢いよく席から立ち上がると、プラスチック食器の金属音がした。その勢いのまま、スズはユキの細い肩を強くつかむと、ユキは少し驚きながら、彼女を見つめる。
「ねえ、教えて! どこでお父さんと会ったの⁉」
ユキの話にすがるスズに対し、彼女はひとつ呼吸をすると、話を始めた。
「ソウマに会ったことがあるの。でも……」
ユキの言葉はそこで詰まった。彼女は迷っているらしかった。
スズは、ユキの肩をつかんでいた、もろ手をそっと離した。今はユキへの心配もあったが、それより、自分の両親の話を聞きたい気持ちを優先してしまった。
「でも……?」
スズは、ユキに尋ねる。
「でも……助けられなかった」
そう言ってユキはうつむいた。長く白い髪がはらりとなる。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




