食事
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
扉からぼんやりと、ノックが薄く聞こえる。
すでに自分の体温で温まった布団の中で背中を丸めているスズは、もう一度、扉のノック音を聞く。
「……スズ?」
扉の向こうから、かすかにユキの声がしたときには、スズの頭は、ぼんやりと起きた。真白さんの声……?
寒気を感じていたスズは、まだ眠いまぶたをこすりながら扉へと向かう。いつの間にか、寝てたのかな……?
スズがあくびとともに、ドアノブに手をかけて扉を開ける。自分よりも少し背の小さいユキが、ちょこんと立っていた。
スズは驚き、ぱちくりと瞬きをする。
「真白さん。どうしたの?」
「眠ってたの?」
スズはうなずいた。
「多分、いつの間にかだと思う」
少し身震いをした彼女の後ろでは、カーテンが翻り、やっと気がついた彼女は窓を閉めに行く。
「食事」
「え?」
スズがキッチンへと向かうと、流し台にフライパンや菜箸などが置いてあり、それは、すでに洗ってあるようで、テーブルの上にあるのは、二人分の食事だった。
「これ、真白さんが作ったの?」
ユキはうなずき、ふせんを貼った料理本をスズに見せる。
彼女は少し呆気にとられた。
「? ——スズ、食べないの?」
「あ、うん。食べるよ」
二人はダイニングテーブルに向かい合って椅子に座ると、ほぼ同時に手を合わせる。
「いただきます」
ユキは無言だったが、両手をきちんと合わせた。
スズの目の前にあるのは、ご飯に卵焼きだ。彼女はそれを少し眺める。おいしそう。ていうか、料理作れるんだ……なんか、意外だな……。そう思いつつも卵焼きをひと口食べると、温かい温度とふわりと香る匂いが口の中で広がる。あ、醤油と、なんか出汁が入ってる?
「これ、おいしいね」
ユキはこくりとうなずく。
「よかった」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




