三人にやってほしいこと
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
授業が終わった、その日の放課後。
スズ、ユキ、カエデの三人は、サクラに言われた。
「これからの作戦のために、ぜひ、皆さんにやってほしいことがあるんだ♪」
ちょうど、ハルトが、グーテンに対して淡々と、そして、一歩間違えれば、彼自身が解職となるような発言をしたときだ。
スズとユキとカエデの三人は、支部から約十キロメートル離れたマンションが立ち並ぶ、高台の場所に向かった。彼女たちはサクラを先頭に、『林』と表札が書かれた部屋の玄関に立ち止まっている。
スズは、美しい文字で書かれた表札を、ぼんやりと見ていた。ここ……サクラさんの家だよね? 多分だけど……。
サクラがガチャッと、玄関の扉が開けると、かかとが低いヒールや白いスニーカーを靴棚の中にしまう。
「ごめーん。今、片付けるね?」
スズが遠慮がちに言う。
「あの、お邪魔します……」
カエデは、黒のスニーカーを脱ぎながら答える。
「邪魔するわ」
彼女が、スニーカーを脱ぐと、胸までの黒髪が揺れる。
彼女は、紺色の制服の上着を着用していた。上着の隅で「東」と四個の輪が重なるように、銀色に光っているのは、『滝海高等学校』の校章だ。
彼女はワイシャツに、紺色の棒ネクタイを巻いている。
スズは、カエデは、スカートを履くのかと思っていたが、それは予想を大きく外していた。なぜなら、彼女は、棒ネクタイと同色のズボンを履いていたからだ。スラックスというらしい。
ここまで思い出したスズは、あ、と小さく声を上げた。
「ごめん、久遠さん。はい。これ」
スズは右手に持っていた革製のカバンを、カエデの目の前に持ち上げる。
「あ……これ、どこで?」
「グラウンドに置いてあったのを、クラスメイトの人が見つけてくれたんだよ。それで、なんとなく、私が預かることになって……」
「ありがとう」
スズは、ぱちくりと瞬きをした。彼女は、あまりと礼を言われ慣れていないのだ。
「あ……うん」
そのあとの彼女の顔は柔和な、はにかむ笑顔になった。
その笑顔に、カエデは唇を軽く噛む。カエデの大切な人たちに、スズの笑顔が非常によく似ていたのだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




