ハルトとアオ、本部に召集3
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
「それもいいが……先ほど、ある女性と日本語で翻訳をしながら、ビデオ通話をさせてもらってね。興味深かったよ、一色アオ——いや、〝アダム〟」
アオは眉をひそめた。
「その女性ってさ……まさか、〝彼女〟じゃないよね?
僕のことを知ってるのは、ごく限られた人間——そのうちの一人は、〝彼女〟だ」
「〝彼女〟とは?」
「知らぬ存ぜぬで通されると思ってるの? 〝真白ユキ〟さんだよ」
アオは怒りのあまり、自席から立ち上がりざまに、議長席のほうに一歩踏み出した。
だが、室長が、それを手のひらで制止させる。すると今度は、ハルトが立ち上がる。彼の黒い革靴が、カッと、床を鳴らした。
「失礼ですが、議長——こちらからの誓約書どおりでは、〝彼女の安全を保証する〟と、記載されていたはずですが?」
グーテンは、議長席に深く座ると、肘掛けにもろ手を置き、それを腹部の前で組む。
「安全は保証した」
ハルトは後ろ手を組みながら、議長席に進み出る。
「パイロットの安全保証——室長の立場からですが、誠に感謝しております」
それから、彼は普通礼をした。そして今度は、灰色の瞳をグーテンに向ける。
「グーテン議長。話を変えてもよろしいですか? 私事ですが、私は日本支部の内部告発には一切関与しておりません。なので、告発をしようと画策してはおりません。
それになにより、その証拠を元にした既成事実はありません。以上です」
ハルトの口上を聞いたグーテンは、ただひと言発しただけだった。
「まるで報告書のようだな」
年若い室長は顔色ひとつ変えず、議長に問う。
「ご不満でしょうか?」
「いいや。しかし、まだ疑いは解けていない。室長。君と、一色のな」
ハルトはグーテンの威圧にも意を介さず、先ほどと同様、重ねて問いかけた。
「そうでしょうか? 一色パイロットも私と同様、まったく、そのような既成事実はありません」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




