スズとユキと、シノ
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズは自席で、目線を斜め下に向けた。
「ていうか、それ、そのあと私が溺れたよね?」
ユキは、乱れた白髪を手ぐしで直している。
「スズが誘ってくれてよかった」
スズはくすくすと笑った。
「髪、ボサボサになっちゃってるよ」
「ん……」
ユキは真顔になると、不思議そうに尋ねた。
「スズ、よく笑ってる。なぜそんなにおかしいの?」
「違うよ。真白さんが面白いからだよ」
「面白い?」
ユキはまだ、手ぐしで髪を撫でつけている。
「髪、全然直らない……」
スズはふっと笑うと、リュックサックの中を探したが、それから、残念そうにユキを見る。
「あ、ごめん。私、くしもってないや」
張りがあるが、今は静かな声がスズに呼びかけた。
「あるよ、スズさん」
声の主はシノだ。シノは、茶色い柄のくしを手に持っている。みるからに、木彫りで、しかも高級そうなくしだった。
「え? いいの? シノ? 借りていい?」
シノは丸眼鏡を押し上げると、にこやかに笑みを、その顔に浮かべた。
「どうぞ」
「ありがとう、シノ。うわあ。これ、きれいだね」
シノから借りた、くしの持ち手には、小さく花柄が彫られている。
スズは、ユキにくしのことを説明しようとしたが、椅子に座った彼女は、早くといてほしそうだったので、あまり説明せずに彼女の髪を梳いた。
彼女は、透明なピルケースを取り出す。
「ん……それ、飲まきゃダメなのかな?」
スズが問うと、ユキは首肯した。そのあと、彼女は、水とともに錠剤を飲む。
シノが不思議そうに彼女に話しかける。
「ねえ、ユキさん。どこか体の調子悪いの? 風邪?」
「平気、シノ。これは、一日のどこかで飲めばいいから。今日は午後忙しいから、今飲む」
「……何かあったら、言ってね?」
「平気。シノもスズも、いいヒトだから」
シノはくすりと微笑む。
「わかった」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




