華麗な跳び
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
アオはため息をつく。
「ま、そんな人いないか。ねえ、スズはできるの?」
「え? 私? 無理無理できないよ?」
「興味本位で聞いただけだから、無理強いはしないよ。……あっ、カエデ!」
歩道を歩いていたカエデは、すぐには、アオに気づかなかった。彼女が読書をしながら、そこを歩いていたからだ。
少しの間、アオが激しく手を振っていると、カエデは三人に気づく。
「何を話していたの? 一色くん?」
アオは、口を囲うように左手を添えた。
「気になる? 一跨ぎでフェンス乗り越えてくれたらいいよ」
カエデは、文庫本を革製のカバンにしまう。
「……でも、これ、ミスしたら危なそうよ?」
カエデは丈の低い金網を指さした。それに、彼女はスラックスなので、指定制服に穴が空いたりすれば、学校側になんと説明すればいいのだろうか、わからなかったからだ。
しかし、アオは相変わらず、カエデに向かって手招きをしている。
「いいから」
アオはひと言そう言うと、スズの肩を自分の肩に引き寄せる。すると、スズは、口を開けて驚いた。
「わっ? え?」
それに、カエデは、形の整っている眉をひそめる。
「ん……」
カエデは、スズに対するアオの行動が不満だったのだ。だから彼女は、先ほど、眉をひそめた。
その様子を見てアオは、スズとの距離を離した。
カエデが金網の向こう側にカバンを置くと、チリンッ、と何かの微細な金属音がする。
スズが彼女の置かれたカバンを見ると、金色のストラップがついていた。猫が魚をくわえている、可愛らしいストラップだ。
彼女は、近くの通行人に会釈をすると、カエデは途端に走り出す。彼女はフェンスにつかんだ左手を中心軸にして、左足を踏み出し、金網を一跨ぎで乗り越えた。
一方、スズたちがいる中学校のグラウンド側からは、主に女子生徒の黄色い声援が聞こえる。
グラウンドに着地したカエデは、姿勢がふらつきそうになると、一、二歩つんのめったが、なんとか体勢を持ちこたえた。
「とっととと……。セーフ……」
そして、彼女はアオを睨む。
「これでいいかしら?」
スズは思わず、わあ、と感嘆の声を発する。
「すごいよ。かっこいい。久遠さんって、かっこよくてすてきなんだね」
カエデは少し驚いて、輝く瞳で満面の笑みを見せるスズを見た。
スズはそんなカエデを見て、首をかしげるが、今はカエデの華麗な着地に、彼女自身、喜びを隠せなかった。
アオは、そのカエデの華麗ともいえる着陸に「変わり者」の司令を思い出した。くそっ。なんであいつが……。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




