スズとユキと、アオ
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズが驚いて声のする方向を向くと、そこには陽気に手を振る人影がいた。
「スズ! お疲れさま」
「アオくん? 何してるの?」
スズは、てててっと、校庭の端に近づく。
「学校帰り。僕、今一人だから」
「あれ? 久遠さんとハルトは一緒じゃないの?」
アオは、うん、と首肯する。彼は左肩にカバンのベルトをかけていたが、それを肩にかけ直す。
「僕だけ早く帰ってきたからね」
彼は十五歳——本来なら中学三年生の年齢で高校には通学できないはずなのだが、ハルトの計らいで高校に通学している。
ちなみに、アオは、カエデとハルトの通学する『滝海高等学校』に通学している。ハルトは、早退する対応が面倒くさいと、ため息をついているらしいが。
「多分、みんなもそのうち帰ると思うよ。ところで今、何してるの?」
アオが問いかけると、スズは苦笑する。
「体育。外で走ってたんだ、苦手だけどね」
彼女はうなじに手を当てる。
アオはスズに近づいてきたユキに目を向けると、少し目を丸くさせた。
「あれ? ユキさん、髪、結ってるじゃん」
アオは、ガシャガシャと、丈の低いフェンスを乗り越える。しかし、それは、スズが想像していた華麗な姿ではなかった。
ユキは、アオの答えに首肯する。
アオは平常な顔だった。
「いつも結っていればいいのに……邪魔じゃないの?」
「今日は外で走るって事前に聞いてたから、縛っただけ」
アオは、へえ、とうなずくと、スズに目を細める顔を向ける。
「ていうか、スズ……今の僕のフェンスの乗り越え方、絶対、一跨ぎで乗り越えるって思ったでしょ?」
「うん。あ、ごめん」
スズはまた、うなじに手を当てる。
アオは、形の整った眉をひそめる。
「見た目で、こいつ、かっこいいなって思っても、フェンス一跨ぎできないだけでダメなやつだって思われても、僕、嫌なんだけど?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




