シノとシュン
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
彼女が視線に気がつき、首を巡らす。
男子はおろか、同じクラスメイトの女子までもが、自分を羨望の瞳で見ていた。
「みんな、どうしたの?」
全員は校庭に各々座っていた。だが、そのときは皆そろって、首を横にして振った。
「え。わからないんだけど? ねえ、どうして?」
スズは、丸眼鏡をかけている村石シノに、腕を組んで詰め寄る。
シノは、その眼鏡をカチャリッと押し上げる。
「スズさん。本当に体育、苦手なの?」
「それだったら、シノのほうが足速いじゃん」
「え、そう?」
不思議そうに答えるシノに、スズは、そうだよ、と首肯する。
スズの百メートル走の記録は、十二秒三十だ。ちなみに、シノの記録は、十秒八〇だ。
スズは不満げに言う。
「シノのほうが足速いのに」
すると、少し低い声が、スズに飛んでくる。
「そうか? みんな興味津々なんだよ」
「あ……シュン。そっちどうだった?」
スズが話せる男子生徒の一人である、波澄シュンだ。
ちなみに彼は、ノヴァ・ドイツ支部に所属している、エミリアのいとこである。そして、エミリアは、カエデのことが友人として、とても大好きらしい。
クラスメイトたちは、スズの存在を測りかねていた。
だが、実はスズが、同じく転校生のユキと仲がいい。そして、転校初日にヘリコプターで現れた謎の青年、山田ハルトの派手な登場に、皆、心を奪われていたのだ。
しかも、スズは親切なので、彼女と密かに、仲よくなりたいというクラスメイトが多いのだ。
スズは、そのまま視線をユキに向ける。そして彼女は、口角を上げた。
「真白さん、何秒だった?」
「わからない。でも、記録係のヒトが、十一秒とか言ってた気がする」
「うわー……。真白さん、足速いねー……」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




