アオと「変わり者」2
護送ヘリコプターが屋上に着陸する。ここは、ノヴァ日本支部のヘリポートだ。
アオがそこに降り立ったとき、風がなびいていた。
「……ホントに司令なの?」
アオが、無礼にも思える態度で彼にそう尋ねると、彼は、なぜかアオに向かって尋ね返してきた。
「だよなあ。なんで俺なのかな?」
手首に三重の手錠をかけられた少年は、なんだこいつ、と、目の前の歳食った人間に眉をひそめた。
細長いたばこを吸ってるくせに、黒いスーツ姿に革靴を履いて、ヘリポートに現れた。また、この壮年の男性は、ネクタイまでしっかりと締めているのだ。それがアオには、なんとなく腹立たしかった。
アオはいつもなら、自分の感情を冷静に受け止めるが、このショウに対する感情はいつも新鮮なものに彼はのちのち感じた。
通常、たばこを吸う人間は、ネクタイを緩めて第一ボタンを外すか、またはネクタイをどこかになくしている。大抵、だらしがなさそうな人間というのは、そういうものらしい。
だが、しかし、そんな印象とは裏腹だったのが、アオの目の前にいる男の家内ショウだ。
そして、アオは、この人間にかまっていられないというように、ため息をつく。
「あのね、僕、大罪人なんだけど。恐ろしくないの?」
「あ? 怖いに決まってるじゃないか。だから、これ」
ショウは、たばこを右手の指の間に挟める。すると、アオの前でそれを振った。
アオは、たばこのくゆらす煙に少々せき込む。少年は、口を覆うように握った拳を当てるが、手首にかけられた三重の手錠がジャラジャラと鳴った。
「けむたいよ」
「悪いわるい。けどな、俺はこれ吸ってないと、君と話せないんでね」
「ヘビースモーカー?」
ショウは、へっ、と初対面の少年をからかうように、口をへの字に曲げる。
「適切な使用方法を守ってるんで、違うね」
そして、ショウは背を向けた。
「行くぞ、少年」
アオはその背に呼びかけた。
「一色アオ。僕の名前は一色アオだよ」
だが、その背中はアオよりも大きかった。当然だ。ショウは、身長百八十センチメートル。アオよりも二十センチメートルほど差があるのだ。




