医務室
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズは、細い手に両耳を当てられた。ユキの両手に耳を塞がれたのだ。
「おわっ……真白さん? どうしたの?」
ユキが厚さの薄い唇を開いて、ハルトに何かを言っている。
ハルトは、灰色の瞳をほんの少しだけ見開いた。そして、彼は、左手の親指と人差し指をこめかみに当てて、嘆息した。そして、自動扉越しから彼は出ていった。
スズには彼の表情は見えなかった。なので彼女は、隣のカエデを見る。
そこでユキは、やっと、スズの耳から両手を離した。
カエデは唇を引き締めていた。スズにとって、その彼女の表情は、とても苦しそうに思えた。食べなくもないのに、食事を無理やり喉に押し込められる感覚に近いだろう。
彼女は紙のように白い顔をしている。唇もほんのり色づいている桃色から紫色に近くなっている。
「ねえ、真白さん。医務室どこ? 久遠さん連れてく」
しかし、カエデはスズに反論した。
「平気よ。一人で行けるわ」
「ダメだよ」
スズは壁の表示を頼りにしながら、医務室へと向かう。
医務室は左側にベッドが二台あった。反対側には、たくさんの書類が積み上がっていて座れないソファがあった。
スズはカエデをベッドに座らせる。
「大丈夫?」
「ええ。あなたは?」
彼女はパイプ椅子を、カエデが座るベッドの近くに持ってきた。
引きずらずに持ってきたので、カタンッ、という音しかたてなかった。
「私? 私なら大丈夫だよ」
彼女はカエデに、薄い毛布をかけた。
「ありがとう……」
「ううん。大丈夫」
「本当に?」
「本当にって?」
カエデは寝返りを打った。
「いえ……なんでもないわ」
スズはその辺にある本を手に取ってみると、ベッドの端に両肘をついた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




