カエデとハルト
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
自動扉からノック音が聞こえると、低い声が聞こえた。
「帰ってきたのか。二人とも」
スズは、スーツ姿のハルトにうなずく。
「あ、うん。そうだ、ハルト。久遠さんすごいね!」
そして、彼女は彼に駆け寄る。
「ていうか、スズ、足大丈夫だったのか? けがしてたのか?」
ハルトに問われた彼女は、もろ手を胸の前で振った。
「あ、あれは……」
彼女はうなじに手を当てて、苦笑する。
カエデはスズと一人分空けて、右隣に立った。
「私の独断よ。ああしたほうが移動に効率的だと思ったの」
「ユキにはしないんだろ? 随分と、スズに肩入れするんだな」
灰色の瞳は、黒い瞳を見つめていた。
「あなたも私と同じように、彼女に肩入れをしてるでしょう? 昔、お世話になったヒトがいるから」
カエデは彼の頬から手を離した。今度の灰色の瞳は、赤い瞳を凝視していたからだ。
「本当に間違えられない問題を間違えたのは、あの二人だ。俺も、おまえも、それをよくわかってるはずだ。おまえは何も悪くない。自分を責めるな」
ハルトは、カエデに瞳を戻した。
「俺はわかってる。おまえは? カエデ?」
彼はカエデに、理解するために何をする? と問いかけているようだった。
「私はエンジェルせん滅を遂行する。それだけよ。あなたも許したら?」
ハルトは、眉根をほんの少しだけひそめた。
「私も、あなたも、ときには問題を間違えることがあるわ。そうでしょう?」
カエデはユキを見て、それから、また彼を見て、今度は顔をうつむかせた。
「ハルト。彼女は私たちと同じ。私たち、人間のために敵を倒してる。それだけでしょう?」
「スズもな」
「私は……そんな大した役割なんて……」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




