黒い影
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズはまた、カエデに横抱きにされる。
「あの……? 久遠さん?」
「落ちると危ないから、私の両肩をつかんで。それに、舌を噛むわよ」
「あ。ご、ごめん」
スズは、カエデの両肩に腕を回した。彼女のうなじに、スズのもろ手が触れる。抱かれている彼女は、ずっと、カエデから顔をそらしたままだった。
「あのさ……歩けるから、離してくれない?」
彼女は遠慮がちに言うが、カエデは飄々と答える。ぶわっと、彼女の黒髪がなびく。
「私、歩くスピード早いの」
「え、そうなの?」
「普通よ。あと……そうね」
ひゅうっ、とカエデとスズは黒い影に飲み込まれた。スズは三回目だが、まだ自分が影に飲み込まれることは、彼女にとっては慣れたものではなかった。
「素直に嬉しがられるのはいいわね。……ただいま」
カエデが挨拶をした相手、ユキは床に座っていた。ノヴァ日本支部のこの部屋で、読書をしていたらしい。
スズは、カエデの影の能力で彼女とともに、ユキのいるこの部屋に直行したということだ。
「おかえり。カエデ。それに……。スズはどうして、横抱きにされているの?」
スズは首肯する。
「確かに。私もそう思う」
この二人のやり取りを聞いていたカエデは、スズを素直に降ろした。
「おお……。あ、ありがとう。久遠さん」
スズはユキに近寄って、そのそばに座る。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




