曇りのない双眸
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
また二人は歩き出した。
今度は、気恥ずかしい雰囲気が、二人の間に流れた。
「あのさ……久遠さんって、頭とか撫でたことあるの? ほら、さっき、私の髪を撫でてくれたとき、手つきが優しかったな——なんて思って」
スズはそれを思い出すと、恥ずかしそうに頬をかく。
カエデは凛とした声だが、優しいトーンで言う。
「あなたの頭を撫でるのは、三回目ね」
その返答に対し、スズはきょとんとした。
「え? そうなの? じゃあ今度、久遠さんと真白さんの髪、撫でてもいい? あ、ハルトのも撫でていいのかな? なんか、みんなの髪、ふわふわしてそうだなあ……」
スズは、三人の髪を撫でる想像をすると、にこりと笑った。
カエデは無邪気な彼女を見て、唇を噛む。
「私、頭を撫でられた経験があまりないから、つい身構えそうで……」
「……じゃあ、地上に着いたらやっていい?」
「——え?」
今度は、カエデがきょとんとするが、スズは曇りがない黒い双眸で彼女を凝視する。スズは、お願い、と、頼みごとをしているようだ。それは、まるで、カエデとダンスをするときのように。
「いい?」
カエデは一瞬だけ、ためらった。
「……ダメよ」
その黒髪の彼女の答えに、スズは不満そうに、唇を尖らせる。
「ええ……」
カエデはスズを抱き上げると、慣れた手つきでウーゼを降りていく。
「はい。着いたわよ」
しかし、スズはカエデの首に腕を巻いていた。彼女は、今さっきまでカエデに横抱きにされていたのだ。
「ねえ、なんで? なんで、私、久遠さんに、その……お姫様抱っこされてるの?」
カエデは、混乱するスズを、地面に両足が着くように安全に降ろした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




