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リリムと贖罪  作者: 霧野うみ
第二戦 ステップを合わせて
113/260

逃げる

 この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。



 カエデは無言で、そのまま壁際に座り込む。 

 スズも、カエデとの間を一人分離れて座った。彼女がちらりとカエデを見ても、彼女は無言だった。

 スズの耳に、壁時計が静かに秒針を動かしている音が響いている。スズにとっては、時計の秒針が、やけにうるさかった。

 カエデは体育座りをしている。しかし、座り込んだ際に、カチャッと、頚部のチョーカーの金属音が鳴った。

 スズには、赤い線が入った、艷めく黒いチョーカーが、何か一種の美術品のように思われた。それが彼女には、美しく、そして恐ろしいものに見えた。

 スズは美術品は詳しくなかったが、黒と赤のそれが、『オフィーリア』の絵画、という言葉を彼女の脳裏に思い起こされたのだ。『オフィーリア』の絵画は残酷だが、どこか目が離せないほどの美しさを持っている。

「そのチョーカー、前にサクラさんが確認してたよね」

 スズがダメもとで尋ねると、カエデは彼女に応えてくれた。

「いつもの作業よ。もう、慣れたでしょうね」

「慣れる?」

 カエデは、まるで思い出を振り返るようだった。

「最初、彼女は慣れなかったもの」

 スズはうなずく。

「そうなんだ」

「むしろ戸惑っていたわ。私たちを〝クロス〟に閉じ込めたほうが、こうするよりもずっと楽なのに」

 カエデはため息をついた。

「でも…………いつも逃げたかったわ」

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


 スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。

 一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。

 一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。

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