同情と心配
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
昼まで練習をしたあとの二人は、廊下を歩いていた。
だが、スズの足取りは少し重い。つい、彼女は、ため息とともに言葉を吐き出す。
「疲れた……」
でも、褒められたな……。どことなく微笑んでいるスズを、ユキは不思議そうに見つめる。
「真白さん? どうしたの?」
「嬉しそう」
「え? そうかな?」
スズは、ホントに? という表情で少し考える。
「そう見える」
しかし、スズの目に、ユキが少し心配をしているような、曇った表情が映る。
「真白さん?」
久遠さんのことかな? ハルトは、明後日から復帰するって、言ってたけど
「もしかして、久遠さんのこと? よかったら私も一緒に、お見舞いに行くよ。ちょうど行きたかったし」
ユキはこくりとうなずく。
「確か、医務室って、ここの近くだよね?」
スズは少し先に指をさすと、ユキはうなずく。
「————よ! 嫌!」
「落ち着いてください!」
!? 今の声って……。スズはとっさに、ユキの手をとって走り出す。
ユキは、初めてのことで少し驚きながらも、スズに従う。
二人が急いで医務室の前に行くと、カエデの声ははっきりと聞こえた。彼女は、桜色のジャンパーを着るサクラに、両肩を押さえられているようだった。
「嫌いよ! 大っ嫌い!! あいつらは、のうのうと生きているくせに、どうして? なぜ、私は選ばれたのよ?」
カエデは、自分を諭しているサクラを睨みつけると、利き手の左手で彼女の右手を強く払う。
「離して!」
サクラは右手を押さえたまま、窓際に追いやられる。
スズはサクラに近づいた。
「大丈夫ですか? サクラさん」
「それより、カエデさんを——」
彼女は、ベッドのシーツを強く握り込んで首を振る。
「同情は必要ないわ」
サクラは、払われた手を押さえたまま、反論をしようとする。
「ですが……」
サクラは、ふと、カエデに払われた右手を見ると、そこが赤くなっている。彼女は、後ろの机上にある注射器を手に取ると、カエデの左腕に刺す。
カエデは、眉をしかめて少しうめく。
「うっ……」
「すみません。私は、カエデさんを心配しているんです。それでもダメでしょうか?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




