二人の相性
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
青年は、スズを手招く。
「ああ、ちょっといいか? スズ」
スズは彼の隣に駆け寄ったあとは、少し見上げながら答える。
「あ、うん。ねえ、ハルト。ダンスどうだった?」
ハルトは、真面目にダンスの復習をしているユキをちらっと見る。
ユキは、すらりとした四肢を、子鹿のように跳ねたり、その動きを止めたりしている。
ハルトは、何かをファイルに書き込んだ。
スズは、なぜ、ハルトが支部にいるのかわからずに戸惑っていた。どう見ても彼は、職位が高そうなきっちりとした黒い服を身にまとっている。それに、首の襟部分には、銀のピンが光っていた。
スズは、ハルトをじろじろと見るが、そのうち彼は、スズに顔を向けた。
「ん? どうした?」
「え?」
スズはきょとんとしたが、胸の前でもろ手を振る。
「あ、ううん。なんでもない」
ハルトはあごに手を当てたが、片手でファイルのページを繰る手を止めた。
「だいぶ曲に体を合わせられるようになったな。テンポも曲に合ってるし……あとは、間違いを意識すればしようとするほど、そっちに気が散るからな」
「そっか」
「ユキはカエデの代打だけど、四、五時間くらいで、この完成度はいいな」
「そう? ありがとう、ハルト」
ハルトは驚いたような顔をすると、ぶっきらぼうに答えた。
「いや、別に……」
ハルトはなぜか、ため息をついた。そのあと彼は、強引に話を変える。
「そうだ。カエデは、明後日から復帰するらしい。よかったな」
スズは、安堵した表情をする。
ユキも今は、左手と右足を伸ばしていたが、ピタリと止まった。両手と両足を下げた彼女は、ホッとしていた。
「よかった、カエデ」
ハルトは、スズのプリントを見ながら尋ねる。
「ところで、スズはどこが難しいんだ?」
スズは立ち上がり、人差し指をプリントの上に滑らせる。
「あ、えっと……」
曲が終わる。
スズは、自分の携帯電話に目を向けた。あ……曲、終わっちゃったな。
ユキはその場に佇んでいたが、彼女に近寄る。
「真白さん」
スズは、ユキに顔を向ける。
ハルトは、二人に呼びかけた。
「じゃあ、さっきのところからだな」
スズは律儀に、彼に首肯する。
「あ、うん」
「じゃあ、行くぞ」
ハルトは、スズの黒い携帯電話から先ほどの楽曲を流す。
スズには、まだ覚えきれていないところはあるみたいだったが、なんとなくコツをつかめたみたいだった。
「すげえ。息ぴったりだな……」
ハルトの顔は、少し嬉しそうな表情をしているようだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




