ウーゼ5号機 起動
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
というのも、実は二・三日前、ハルトは渋々だが——査問委員会に強制的に招集をされた。そもそも査問委員会とは、なんなのか。
査問委員会。それは、特定の問題や議案などを、公正かつ詳細に、調査や審査などを行うため、設置される専門委員会のことだ。
彼は、その二名の軍人たちに質問攻めをされる間、軟禁状態にならざるを得なかった。
ハルトは、影に隠していたマグカップの取っ手をつかむと、そこに入れてある冷たいココアを飲みきった。
「林主任。民間人および非戦闘員の避難は?」
「三分前に、全て完了しています」
ハルトは、彼女にすぐに答える。
「わかった。それと、酸素システムはどうだ?」
室長に再び呼ばれた彼女は、今度はさまざまな気体の名称と、その数値が表示されているパーソナルコンピュータの画面を見つめる。
「酸素システムは、現在、六十八パーセント。正常に稼働しています。ですが、2号機パイロットは……」
サクラが、ハルトを茶色の目で見ると、彼はあごに手を当てる。
「でも、カエデは——2号機パイロットも問題ないのか? 昨日も、エンジェルを倒せはしたが…………」
彼は、自身の後方にある部屋の扉を一瞥するが、まだ、その扉は開いていないようだった。
その場所は、ノヴァ日本支部の要である女性の執務室だが、その主である彼女は、なかなか部屋から出てこないことが多い。主な内容は、支部内で立てられる作戦要項の有無や、ノヴァ日本支部の上層組織との電話会談だ。
ハルトは懸念を振り払って、サクラに尋ねた。
「林主任、2号機パイロットの様子を確認してくれ」
「はい。室長」
続けて、メインディスプレイから、ウーゼ開発研究主任の音声が対応をする。
「室長。CPO注入開始します」
『ファースト・コネクトを開始』
『続けて、セカンド・コネクトを開始』
次々に飛んでくる報告の指示を、主任のサクラが受ける。
『ファースト・コネクトおよび、セカンド・コネクトも完了しました』
『破壊再生は、ありません』
『パイロットとウーゼのシナプス、接続完了』
再び、凛とした静かな声が、ディスプレイから指令室全体に響く。
『5号機の思考言語を、日本語に設定』
男性オペレーターが、『了解』と応える。
『5号機、射出ターミナルに移動完了』
ウーゼ開発研究主任が、オペレーターに応答する。
「5号機の射出は、五番ルートに変更してください」
また続けて、サクラが応える。
「5号機、適合率を再計算中、終了しました。5号機の適合率は、三十五パーセントを維持。誤差は〇・〇五です。2号機パイロットのシナプス汚染は、基準値内です。パイロットの呼吸、および、心拍数は安定しました」
今度は、指令室につながっている5号機のディスプレイから、凛とした声が聞こえる。
『ウーゼ5号機、起動』
ヴヴンッと、鈍い起動音がケージ内に響き、固定された5号機は、バチバチと、激しく列車が急ブレーキをかけたときのように、火花を散らしながら射出をされる。
打ち上げをされたロケットより、凄まじい速度で加速をし続け、地上へと向かって行った。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




