無色変異種
──〝無色変異種〟。
それは先述通り7種の突然変異種が一角に属する竜化生物であり、白色変異種や黒色変異種には及ばずとも増殖変異種よりは強い上、厄介極まる性質をも持って生まれる異分子。
……その名から凡その想像はつくかもしれないが。
かの存在は生まれつき──……全身が〝透明〟なのだ。
迷宮を護る者相当の巨躯を持って生まれたとしても、その肉体は決して肉眼で捉える事はできず、そればかりか技能や魔術を用いたとしてもボンヤリとしか捉えられないという。
それこそ天使や悪魔、死霊の目にも明瞭に映らぬほどに。
しかし、その無色透明な生物を捕捉する術が1つある。
「精霊にはハッキリと見えてるんだったね、無色変異種が」
「そーそー! だからアタシの出番ってワケ!」
そう、精霊だけはその姿を明瞭に捉える事ができるのだ。
そして先述通り、この国には竜化生物自体の棲息数が他国とは比較にならないほど少なく、その影響で竜狩人の数も少なく実力も劣ると来ている以上、本来ならば管轄外である筈の首狩人の1人、【盲目の偶像】に白羽の矢が立つのはもはや必然だったのだろうと、ユニはそう確信していた。
……まぁ、それはさておき。
「あぁそういえば……ねぇ、ポッピー」
「なぁに?」
ユニは、ある1つの疑念を抱えていて。
その疑念を抱くに至った原因となる言葉を紡いだ張本人たるポッピーに対し、それを解消する為の疑問を投げかける。
「私があの迷宮に入っちゃいけない理由って何?」
「へっ? ど、どうしてそんな事……」
曰く、『攻略拒否の理由を述べよ』──と。
ポッピーが動じてしまうのも無理はない。
そんな事、彼女は一言も口にしていないからだ。
しかし、ユニの目と耳は確かに感じ取っていた。
『それはこっちの台詞だよぉ!』
他国を拠点としている筈なのに──というユニを知る者なら抱いて当然の純粋な疑問も、ユニにはこう聞こえていた。
『どうしてここに居るの!? よりにもよって今……!』
……と。
「んうぅ……っ、はぁ……しょうがないか……」
もちろん単なる思い込みかもしれないが、それにしては辻褄が合いすぎており、この疑念が解消されるまで絶対引かないという意思を感じたポッピーは観念したように息をつき。
「入っちゃいけないって事はないんだよ? アタシにそんな権限ないし。 ただね? 今は入ってほしくないっていうか……」
「今は? 討伐以外で、あの迷宮に用事でも?」
拒絶というよりは『遠慮してほしい』、或いは『譲ってほしい』という随分と下手に出る形の懇願をする彼女に、もしやと思ったユニは討伐以外にやる事があるのかと更に問う。
少なくとも今は突然変異種の討伐以外に興味がないユニとしては、そこに別の目的を持つ誰かが居て、それがユニも認める強者であるならば配慮してやるのも吝かではなかったようだが、どうやらそれも違うらしく『うーん』と唸った後。
「まぁ、結局は討伐が目的なんだけど──」
「──その様子を、撮影するんだよね。 アタシが主演で」
「……撮影?」
何ともふわっとした解答にユニが首をかしげる一方。
(テクトリカがよくやってるアレの事、よね?)
アシュタルテは同業者の行いから答えに辿り着いていた。
動画か映画、或いはその両方を撮影するのだろうと。




