【盲目の偶像】
そもそも精霊術師とは、あらゆる職業の中で唯一技能を持たず、気まぐれ極まる精霊たちに力を借りる事で戦う職業。
信頼、愛情、恐怖、使役の形は様々だが、この一見すると芋臭くも思える少女はユニとも違う形で精霊たちを従える。
一言で言えば、それは──〝推し活〟。
ポッピー・☆・セレブリティという名の偶像を精霊たちがファンとなって推し、これといった対価もなしに望む力を貸してくれており、ユニの背後に悪魔が居る事も、その悪魔が悪態をついている事も命令なしに教えてくれたのだとか。
もちろん、ユニから見ても異常なまでの愛され方にはとある理由があるのだが、それはまた追々明らかとなるだろう。
……閑話休題。
『……なるほど、精霊は魔力を形として捉えられるから技能で姿を隠したユニや悪魔の私も見えてるって訳ね。 それを命令なしで行えるって事は、そこそこ優秀ではあるのかしら』
何の前触れもなく存在を看破された事に驚くアシュタルテだったが、それが精霊の仕業と解れば特に警戒の必要もないとばかりに眼前の少女を値踏みしていたその視線の意味を。
「おっ、もしかしてアタシのファンになっちゃった?」
『馬鹿言わないでちょうだい、人間の分際で』
「あれー? 人外には結構モテる筈なのになぁ」
あろう事か『見惚れている』と勘違いしたポッピーの得意げで可愛らしい笑顔に、アシュタルテは冷徹な声色で返す。
人外──精霊や天使、悪魔や死霊辺りの事を指す総称。
事実、彼女はそれらを召喚したり使役したりする職業の適性のみが異様に高く──特に精霊術師の適性が突出しているようだ──モテるというのも間違いではないのかもしれないが、流石に魔界のNo.2はそう簡単に靡かないらしかった。
……再び、閑話休題。
「それよりポッピー、どうして君がここに?」
姿を隠していたのに見つかったという事より、仮にもAランク最上位の首狩人が何故こんなところに居るのかと問う。
……そう、ポッピーは竜狩人ではなく──首狩人。
本来、迷宮などに用はない筈なのだ。
たとえ突然変異種の発見報告が上がったとしても。
「それはこっちの台詞だよぉ!」
「え?」
しかし、どうやら『何故ここに』という疑問はユニのものだけではなかったらしく、ポッピーはぐいっと顔を近づけ。
「どうせユニちゃんの事だからもう知ってんでしょ!? あの迷宮に突然変異種が出たって話! そんでね、その突然変異種が精霊術師と相性が良い種類だったの! どれだと思う!?」
「精霊術師と相性が良いって事は──」
すでにユニも知っている突然変異種の情報と、まだユニが知らない突然変異種の種類を問う旨の元気な声に、ユニは少しばかり考える素振りを見せた後、とある存在に辿り着き。
「──あぁ、〝無色変異種〟か」
「当ったりー!」
『クリプシス……?』
7種の突然変異種が一角、無色変異種の名を口にした。




